銅板菱葺きのファサード
夜景 ガラススクリーンが浮かび上がる石神井川沿いの眺め
石神井川緑道公園と一体化した敷地内のサザンカ生垣とシダレザクラとソメイヨシノを列植した桜並木
2014年 デザイナーズマンションの設計でグッドデザイン賞を頂きました。
道路側見返しのファサードの眺め
都市計画法の緑地なので鉄筋コンクリート造は建築することが出来ません。
敷地は台形の変形敷地です。収益率を最大にするため建蔽率いっぱいに建物を計画しています。
建蔽率いっぱいで、緑化計画必要面積とワンルームマンション条例により最低居室面積が決められて、その上に地区計画で建物配置に規制がかかるという針の穴を通すような厳しいプランニング検討作業になっています。
普通、共同住宅では容積率とレンタブル比がプランを決定付ける上で重要になりますが、本敷地条件は、都市計画区域なので3階までしか建てられないため、容積率より先に建蔽率が厳しくなります。
ブレースを無くして、そのスペース分を貸し室面積に振り替えられ、プランの自由度が得られる鉄骨造純ラーメン構造としています。
型枠の転用回数を多くすることでコスト削減のメリットがあるため、既製プランとする必要性があるプレキャストコンクリート造や、ある程度偏心のない平面計画となるように、長方形のきれいなプランが必要なXYブレース構面のある工法は採用できません。
きれいな矩形プランであればX・Y方向に壁面ブレースを取った、プレース耐力壁ラーメン構造として少しでも柱を細くするか、もっと軽量化すれば柱なしのブレース耐力壁鉄骨構造も可能です。
しかし、柱なしブレース耐力壁鉄骨構造にするためには、マンションとして重要な要素である防音・遮音性能も犠牲にして、軽量化を最大までする必要があります。
外壁をサイディングで下地をケイカル板として耐火性能を確保するなど鉄骨アパートの仕様にどんどん近づいていきます。ここがとても難しい選択です。
建築基準法では共同住宅として同じ定義ですが、マンションとアパートではオーナー様・入居様の見方はまったく違います。
鉄骨アパートの仕様は、お施主様が望む建物のグレードではないとのご指導から採用しませんでした。
重量鉄骨造3階建てで、マンションのような価値のある建物とのご要望を頂いておりました。
景観法重点地区の色彩基準に適合したグラデーションパネルと目地を合わせたコンクリート打放し
そのため、耐火建築物重量鉄骨造でありながら、上下階の防音・遮音性能を鉄筋コンクリート造マンションと同じ仕様として、コンクリートスラブ165mm厚を打設して鉄骨梁とスタットボルトで床面と梁を定着させる工法で設計しています。
通常、鉄骨造ALC建築であれば床は山形のデッキスラブとして山部分で70程度、谷部分で120程度のコンクリートが打設される工法か、もっとグレードを下げるとALC床となります。
デッキスラブやALC床では、防音・遮音性に必要な重量(正確には面密度ですが・・・)を稼げないため、鉄筋コンクリート造と同じ防音・遮音性能を望めません。
デッキスラブで鉄筋コンクリート造150mm厚スラブ並みの防音・遮音性能を確保するためには、山上で150厚さのコンクリートを打つのが簡単ですが、それですと、ただコンクリートの重みが増えるだけで防音・遮音性は上がっても、単なる重量増となるだけで耐震性能としては悪くなります。
ニュートンの運動方程式のF(地震力)=m(建物重量)×a(地震の加速度)です。m(重量)が大きくなれば建物が受けるF(地震力)が大きくなります。
また構造計算の側面でとらえますと、デッキスラブはデッキの谷部分を梁に溶接して床スラブと梁が一体となる剛床仮定が成り立ちます。しかし、折り曲げた構造なのでX・Y方向では実際にはスラブ厚さが違うので剛床の剛性も違ってくるはずです。
コンクリートスラブ165mm厚を打設して鉄骨梁とスタットボルトで定着させる工法では、より強い剛床が成り立ちます。
剛床仮定とは構造計算において、各層ごとの変位が一定であるという条件で構造計算できることをいいます。
ラーメン構造とは柱・梁剛接合のことです。柱と梁が水平地震力を受けても接合部は変形せず直角を保とうとします。その反対がピン接合などです。
柱が何本か立っている建物の床の重さや重心に偏りがあれば一番偏ったところの柱に大きな変位が起こります。しかし、この剛床仮定が成り立つということは、すべての柱に均等に水平地震力が作用するということになるので、ある程度の範囲内の不整形な建物でも、均等に地震力が作用するのでバランスが良くなるということがいえます。
今回の敷地は不整形な建物となるため、この剛床が強く成り立つこの工法はとても有効だと考えています。
そこで、デザイン的にも床がコンクリートであることをを表現するためALCパネルの間にコンクリート床の小口が165mmの厚みで見えるデザインとしました。
防音・遮音性と剛床仮定そしてデザインの3方で生かしたコンクリート床としています。
ガラスファサードバルコニーと前面の石神井川越しの公園と緑道
柵を設けるのではなく、生垣として公園の植栽と敷地内の植栽が一体として広がりが出せるようにとお施主様よりご指導を頂いております。
一棟借り上げの学生賃貸マンションとなっております。
ご入居を希望される学生の方は是非
公園からの眺め
実際の植栽は緑化計画に基づいて行われ石神井川の桜並木呼応して敷地内にも樹高6mのシダレザクラとソメイヨシノを交互に列植します。
お施主様が町並みに貢献できる緑化計画をお考えになられています。
石神井川沿いの桜並木の緑道に、さらに桜をたせるようにして、石神井川沿いの桜の見所のひとつと思っていただけるよう考えいます。
ガラススクリーンが行燈のように浮かぶバルコニー面
バルコニーガラス手すりと、コンクリートスラブからコンクリートスラブへと連続したガラススクリーンを設けてその後ろに給湯器袖壁を隠しています。サッシもスラブまで伸ばしていますので、室内からの眺めもとてものびやかです。
中廊下天井のダクト
窓の開口幅は、地震時の外壁ALCパネルロッキング機構が一番正常に働くことを考慮して、外壁ALCのモジュールに合わせた幅となっています。
中廊下天井に、非常照明などをよけながら、各室のキッチンレンジフード排気と浴室3室換気扇ダクトを引いています。こうすることでバルコニー窓側にはダクト貫通部となる袖壁や欄間壁、ダクト梁貫通部を設ける必要がなくなり、石神井川沿いの桜並木が眺められるピクチャーウィンドウの大きな窓がとれています。
線材置換された構造解析モデルと実態がトゥルーであることを強く意識して、梁構造材にダクト貫通穴をあけない設計としています。
一階エントランス前のダクトレイアウト
非常照明 感知器 天井照明をかわしながらダクトレイアウトをしています。
また、各住戸から防火区画から出るダクト部分は壁がALC壁となっています。
ALC壁は内部の鉄筋が入っている位置とパネル幅が600mmと決まっているので、このルールではパネル1枚当たりダクトスリーブ穴は一つしか開けられませんし、開ける位置は、中央と決まってきます。
室内のALCパネルの場合、純ラーメン構造の鉄骨造なので、層間変位を考慮する必要がありますが、雨水による雨漏りを考慮する必要がありません。
そこで、本来ALCパネルの位置に合わせて、住戸内から廊下にダクトを通す際に、ダクトを曲げてパネル中央への位置修正が必要です。その際に左右方向上下方向2回のダクトエルボによる圧力損失が発生します。それを避けるためダクトをまっすぐ通してALCの規定位置から開口穴がずれることを許容しています。
意匠設計 構造設計 設備設計で相反する課題があるとき、その部位ごとに、なにが優先されるのかを、統括設計者が判断するためには、それぞれの技術設計者の立場に立てる知識が必要だと考えます。そのためにも、統括設計者である意匠設計者が構造・設備の知識を身につけることは大切だと考えています。
一階エントランス前のダクトレイアウト クローズアップ
ダクトが中廊下から外壁に面する壁面で、かつ、ダクト距離が短くなり圧力損失が少なくなるルートを検討すると、一か所に集中している箇所があります。
ダクトの曲がりを直角から45度にすることで、圧力損失が少なくなり、レンジフードファンの性能と価格を上げずに工夫しています。
排気ダクトのレイアウトが、自動車やバイクのエキゾーストマニーホールドやマフラーに似ています。流体排気がスムーズに流れる様子が、形として表れています。
1階室内からの眺め
借景として資生堂専門学校の庭が眺められます。
2階室内からの眺め
居室面積はワンルームマンション条例をクリアする面積を確保しながら、居心地の良い部屋として収納空間を確保するため、梁底まで天井としながら最高高さいっぱいの階高として、天井高さを最大限確保しています。
桜並木が眼下に広がります。