1階コンクリート打設
新宿区市谷での鉄筋コンクリート造4階建て新築賃貸マンションの建設事例です。
1階部分のコンクリートを打設しました。
コンクリート打ちっ放し仕上げのデザイナーズマンションなので、この建物 最大のイベントです。
土工職人として美しいコンクリート打ちっ放しができることを念じながら型枠を叩きます。
コンクリートがキッチリまわり、型枠と流し込まれたコンクリートの間にはさまった気泡を抜くために、片岡も土工職人の一人として型枠を叩いています。
男の仕事です。
美しいコンクリート打ちっ放しができることを念じながら木槌で一心不乱に叩きます。
ちなみに
叩きにもいろいろとコツがあります。
部分的な振動とならないようにするため、広範囲にゆるやかに振動を伝えるために、桟木や金属単管サポートを叩きます。
型枠本体はなるべく叩かないようにします。
固まりだす前にコンクリートが打設されたそばで叩く必要があります。しかし、型枠の中では上階から流れてくるコンクリートがどこに打設されているか見ることができません。
あらかじめ決められたコンクリート打設計画とコンクリートが筒先から流れる音をたよりに叩きます。
逆に固まりだしたところを叩くのは良くありません。
コンクリートが流し込まれた部分とまだ流し込まれていない部分は、型枠を叩いた音で判断します。
コンクリート受入れ検査
受入検査とは、コンクリ―との搬入時の検査の事です。
設計監理者としての仕事です。
1.コンクリートの調合強度の検査
2.構造体コンクリートの圧縮強度の検査
3.フレッシュコンクリート(まだ固まらないコンクリート)の検査
4.コンクリートの種類・運搬時間の確認
があります。
受入検査では、トラブルを避けるためにも前もって施工計画書・品質管理計画書の中に、受入検査のために行う試験および検査の項目・方法・時間・回数・判定基準・試験場所
品質管理体制、報告事項と承認事項の区別、報告の時間、設計監理者の承認時期、および不合格の場合の対処方法などが前もって盛り込まれています。
コンクリートの調合強度の検査
試料の採取は、打ち込み工区ごと、打ち込み日ごと、かつコンクリート打ち込み150立米ごとに1回おこないます。また、1回の試験のために同一運搬コンクリートミキサー車から3本の強度試験用供試体を採取します。
試験は、標準養生で材齢28日で行い、3回を1検査ロットとして合否を判定します。
受入検査の合否の判定基準は、3回の試験結果の平均値が呼び強度以上であれば、そのうちの個々の試験結果は呼び強度の85%以上で良いことになっています。
1検査ロットとは、3回の試験によることになっているので、通常の場合450立米になります。しかし、打設の機会によっては、450立米にならない場合もあります。
構造体コンクリートの圧縮強度検査
構造体コンクリートの圧縮強度検査は、構造体に打ち込まれたコンクリートが設計基準強度を確保しているかどうかを推定するために行います。
この検査は、建築基準法施工令第74条(コンクリートの強度)および国土交通省告示第1102号(設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリート強度の基準等)で規定されている事項に基づいて検査します。
構造体コンクリート強度の検査も、打ち込み工区ごと、打ち込み日ごと、かつ150立米またはその端数ごとに1回の試験を行って合否を判定します。試供体の採取は、150立米を1ロットとして時間をおいて、1コンクリートミキサー車から1本づつ試供体を採取し、3台のコンクリートミキサー車から合計3本、予備を合わせると6本の試供体を採取します。
また、午前と午後の最初のコンクリートミキサー車から1回ずつと、中間に1回という採取の仕方も行っています。
このメリットは、コンクリートの品質に不安のある初期の時期にコンクリートのバラツキをチェックできるからです。
レディーミクストコンクリート工場側は、これを嫌う傾向にありますが、供給を受ける側では、品質がまだ安定していない時点でどのくらいのバラツキで抑えることができているかを知ることができます。
これにより、レディーミクストコンクリート工場が、品質管理に神経を使っている度合いがわかることにもなります。
コンクリートの検査は、第三者公的試験機関により行われます。
供試体の養生は、現場水中養生として、予備の試供体については現場封かん養生することが原則ですが、地価の高い都内の現場でそのようなスペースが取れる現場はなかなかないのではないでしょうか。第三者公的試験機関で行われます。
コンクリート圧縮強度試験成績書で示され、構造体コンクリートの合否判定基準は、国土交通省告示第1102号に規定されています。
下記の1.2のいずれかを満足していることが合格の基準です。
1.現場水中養生による場合は、材齢28日における圧縮強度試験の平均値が、設計基準強度以上であること。
2.現場封かん養生による場合は、材齢28日における圧縮強度試験の平均値が、設計基準強度の7/10以上であり、29日から91日までのn日に設定した強度管理材齢の圧縮強度試験ぼ平均値が、設計基準強度以上であること。なお、91日以内のn日の供試体は、当該コンクリートが打ち込まれた箇所の構造体から採取したものでもよいこととなっています。
フレッシュコンクリートの検査
フレッシュコンクリートのことを国土交通省共通仕様書では、まだ固まらないコンクリートと呼んでいます。
フレッシュコンクリートの検査項目は、ワーカビリティー及びフレッシュコンクリートの状況・スランプ・空気量・コンクリート温度・塩化物総量などです。このような試験を行うことでフレッシュコンクリートの性状を把握することができます。
この検査で不合格となった場合は、そのコンクリートは返却して引き続いて数車のコンクリートミキサー車の検査を行い、その中にも不合格のものがあれば、コンクリート工場に連絡して原因を究明して対策します。
今回は特に不合格はありませんでした。
スランプはコンクリート打設の最重点項目
スランプは、フレッシュコンクリートの流動性の程度を表しています。
今回のスランプは、設計値では18㎝(ほかのコンクリート打放し建物でも18㎝です。)でしたが、施工会社さんの提案を受け、高性能AE減水材によるコンクリートのまわりの良いスランプ21㎝を構造設計者と協議して決めています。
昔と今ではスランプの認識が変わってきています。
スランプの大小は、硬化したコンクリートの品質に大きな影響を与えます。スランプを大きくすると単位水量が多くなりコンクリート強度を確保するためには、単位セメント量を増大させる必要が生じます。セメント量の増加は乾燥収縮の増大によるひび割れの誘発を生み、水量の増加はブリージングの増加による鉄筋付着力の低下や水密性・耐久性の低下につながります。
昔 長く続いたスランプ21㎝時代(通称シャブコン)での耐久性の低下によるコンクリート建築の不信の時代がありました。近年はスランプを18㎝以下に抑えようとする機運が定着して、流動化コンクリートなどの普及により低スランプへの取り組みも一般化してきています。
スランプは特記仕様書で指定しなければ、国土交通省共通仕様書の18㎝以下(基礎・基礎梁は15㎝か18㎝以下)となります。JASS5では、スランプは通常の場合18㎝以下、流動化コンクリートでは21㎝以下です。高強度コンクリートや高耐久性コンクリートではそれぞれ15㎝以下、12㎝以下(これらを流動化させた場合には18㎝以下)と規定されています。マスコンクリートは15㎝以下です。
昔は夏期に、スランプと空気量がダウンした流動性が悪くなったコンクリートをポンプ圧送したため閉塞して、ポンプ圧送業者や土工からコンクリートミキサー車の運転手が施工性を回復するために加水することを強要されて実行に及んで、それがマスコミの指摘をうけて世間からバッシングされたことがありました。
また、タイムオーバーしたため荷卸しないでコンクリートミキサー車を帰したら、工場で加水して再度現場に運んできたという考えられないこともマスコミで報じられたことがありました。
そこまではひどくないにしても、スランプに頼る姿勢は施工関係者の間にはあります。スランプ21㎝に比べると18㎝は明らかに流動性が悪く、21㎝のスランプに慣れている土工職人などのコンクリート打設の関係者は、細かいところへのコンクリートの充填に不安を訴え、ゼネコン(建設会社・施工管理者)へ少しでも高スランプのコンクリートを要求してきます。
このコンクリート打設での職人とのトラブルを避けるために19㎝、場合によっては20㎝のスランプのコンクリートを生コン工場に指示していました。スランプ18㎝での許容差は±2.5㎝です。スランプ18㎝を設計値とした場合、15.5㎝から20.5㎝のバラツキ範囲まで認められます。
許容差の範囲で低い方の15.5㎝のコンクリートを納入されたのでは、流動性が悪いので豆板(ジャンカ)などの欠陥が出る可能性があり、打設時に職人の
『こんな固いコンクリート打てるか!もっと柔らかくしろ!』
という強引な要求が出て、コンクリートミキサー車の運転手と悶着を起こす心配がありました。
19㎝のスランプでは、許容範囲が±1.5㎝で17.5㎝~20.5㎝の範囲となります。設計図書で指定されているスランプ18㎝での許容差の範囲内であり、20㎝で生コン業者に指示しても低い方のスランプ18㎝での許容差の範囲内に入るといったきわどいことを行っていました。