住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
東京都板橋区にあります巣鴨信用金庫 志村支店です。
外観のみの撮影です。巣鴨信用金庫さんの許可を頂いております。
じつは、巣鴨信用金庫さんは、弊社のメインバンクでして、お世話になっております。(^-^;
設計は、エマニュエル・ムホー先生です。
フランス人女性建築家のエマニュエル・ムホー先生は、日本古来のデザインを現代にも活かしたいという想いから、伝統的な間仕切りにヒントを得た色とりどりのパーティションシリーズ『色切/shikiri』を編み出されています。
その『空間を色で仕切る』というコンセプトから、色を平面的でななく三次元空間を形作る道具として扱い、建築、インテリア、プロダクトデザインまで幅広く手掛けています。
この『空間を色で仕切る』という新しい概念に、片岡は感銘を受けました。
普通の建築家とは一線を画す、色というマテリアルで新境地を切りひらいた建築家だと思います。
巣鴨信用金庫さんのコンセプトは、「喜ばれることを喜びに」、1秒でも長く居手掛けるたくなる空間づくりを目指すことです。
その答えとしてのエマニュエル・ムホー先生による巣鴨信用金庫志村支店のデザインコンセプトは、「虹のミル・フィーユ」です。
建物からせり出したファサードの飾り庇は、12色に塗装されたアルミパネルで構成されています。夜間には層の間に設置されたLEDによりライトアップが可能です。
庇の最大出幅は2800mmあります。庇と庇の最小幅は400mmです。
庇と庇の間をどうやって施工したのでしょうか。
施工難易度はとても高いと思います。
ベンチがあります。
都内で私有地にベンチがあるのはとてもめずらしいです。
ビル管理上しかたのないことなのですが、ベンチでたばこを吸う人や悪い人がたむろされるのを嫌うので、普通ビルオーナー様は私有地の空きスペースにベンチなどは設けません。
公共の場ですら、わざと腰掛けられないように天端を斜めカットにして、人が腰掛けられないディテールにすることが設計者に求められます。
人を受け入れる巣鴨信用金庫さんのやさしい気持ちを感じます。
外装金属パネルの美しい発色は菊川工業株式会社さんの施工技術です。
菊川工業株式会社さんはエマニュエル・ムホー先生の一連の巣鴨信用金庫さんの作品で志村支店の他に中青木支店・常盤台支店を施工されています。
17号線道路側からの眺め
建物の雨仕舞に関係ない飾り庇をつけ、その軒天を着色する発想がすばらしいです。
軒天は人の視線としては、見上げの上でとても重要ですが、立面ファサードでは表現されないので、ややもすると軽視される部分ではないかと思います。
実務では、柱梁に囲まれたバルコニーや、庇の軒天井は、防火上・落下剥落問題上スパンドレルやサイディングなど不燃 乾式であることが通常求められる部位で、バルコニー避難ハッチやエアコン室外機の吊り金物がある軒天などはさらにデザインするのは難しいです。
片岡は、国宝日光東照宮陽明門の屋根を支えるために柱頭に設けられる部材である4段組物+3段組物のような軒下や、五重塔の屋根の重なりに似た建築様式を感じました。
菊川工業株式会社さんの施工事例ページの情報によりますと
飾り庇のボーダー及び軒天のアルミカットパネルは厚さ3mm フッ素樹脂焼付塗装全艶
屋根面はアルミパネル 厚さ2mm
外壁パネルはアルミパネル 厚さ2.5mm 裏面ケイカル板 厚さ35mm フッ素樹脂焼付塗装全艶白とあります。
飾り庇なので雨仕舞は必要ありません。庇の雨水縦樋が無い仕様に見受けられます。
12層の飾り庇の軒天パネルは、アルミカットパネル厚3mm 12色のフッ素樹脂焼付塗装全艶仕上です。
他では見たことのないすばらしい発色です。
軒天に難易度の高いカラフルな着色をすることで、太陽光による紫外線劣化も軽減される優秀なデザインだと思います。
青系統が4色、緑系統が3色、ピンク系が2色、黄色系統が3色で構成されています。
側道側立面
飾り庇以外は白で統一されています。
道路側2面ファサードは、アルミパネル厚2.5mm裏面ケイカル板厚35mm フッ素樹脂焼付塗装全艶白 パネルサイズは約W3300H380と約W3300H1000です。
内装は写真不可なのでご紹介できませんが、テーパーカーブガラスをもちいた3層吹き抜けのトップライトの他に、インテリアもカラフルなデザインがほどこされています。
巣鴨信用金庫 志村支店
住所:東京都板橋区小豆沢1丁目13−8