住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
墨田区にあります長谷川逸子先生設計のユートリア(すみだ生涯学習センター)を見学してきました。学生時代 湘南台文化センターを見学したことがあります。回遊性やにぎわいが感じられる建築で、デザインや造形の美を追求するような建築とは異なる価値観で建築美学を踏襲したなかで楽しげな建築を設計で実現できることを体感して感動しました。その湘南台文化センターを思わせる建築だと思いました。内観は職員の方の許可を頂き撮影させていただきました。新建築1995年1月号に発表された作品です。
プラザ
明治通りから入る正面入口です。湘南台文化センターのようなワクワクするエントランスです。
プラザのブリッジ
4階 3階 2階とブリッジが行き交う密集度がすごいです。そもそも、機能性や合理性としては、2棟に建物を分断していますが、それほど大きな規模でもないので、こんなにブリッジの数が必要なのかといえば違うと思います。しかし、回遊性やにぎわい、散策する楽しさを演出する上で重要な要素だと思います。このブリッジ自体がこの建築のデザインや思想の上でとても重要な要素なのだと思いました。勉強になります。
A棟 3階 研修室
2面の床から天井までのフルハイトカーテンウォールから別棟とブリッジが眺められます。
B棟 4階 屋外緊急避難用通路とパンチングメタルスクリーン
パンチングメタルの円弧のスクリーンの断面ディテールが見えてかっこいいです。A棟の単純な矩形の上に三角パネルのパンチングメタルのスクリーンを斜めにかけて外形を複雑にしています。勉強になります。
B棟 3階 廊下
ガラスカーテンウォールの外部にグレーチングのキャットウォークがあります。ガラス天井には日除けのスクリーンがついています。透明にしようとしてガラスにしているのにスクリーンをつけたり、華奢なディテールに見えるようにガラスを用いているのに床面が見通せなくなるグレーチングのキャットウォークをつけたり、目的と反対のことを同時に設計するその思考が、自分ではなかなか価値判断にとまどいできないと思います。勉強になります。
B棟のカフェレストラン屋上防水
1階カフェレストランのサッシは多角形で円弧が構成されているのが見えます。屋根面が上階のプランと異なるため一部に防水が必要な屋根面が見えます。一見無秩序で破綻しそうなプランに見えますが、それがにぎわいを生んでいるのだと感じます。
カフェレストランの屋根部防水面は鉄筋コンクリート造で塗布防水としているようです。鉄骨造ですとこういう部分はディテールが難しくなると思いますが、鉄筋コンクリート造のスラブ面とする事で防水性能に関して保守的なディテールになっていると思いました。アクロバティックに攻めるディテールと守るディテールの区別がとても勉強になります。
5階プラネタリウムドームとEVホール部の廊下にレベル差があり屋上を支える鉄骨柱と立ち上がり部から錆と漏水が発生してボードが膨れてグズグズの箇所がありました。しかし、これだけバラエティーの富んだディテールと複雑なプラン構成でこの部分以外が一見した限りで目につく不具合は見当たりませんでした。長谷川逸子先生のアクロバティックに見せながらディテールを守ろうとする考えか、または、メンテナンス管理が成功しているのではと思いました。
見学できない場所がいくつかありました。維持管理改修工事が見学時も行われていてメンテナンスが行き届いているのかもしれません。
B棟 階段室
金属の表現が多い中でブルーのオブジェが映えるように思いました。
A棟のガラスカーテンウォール外壁
左手にA棟 B棟を3層にわたるブリッジ。右手にA棟とB棟をつなぐスクリーンと屋外階段 ブリッジが見えます。建物内をぐるぐる回れる回遊性があるのがわかりにぎわいや建物内を探索できるワクワク感が演出されていると思います。
B棟 3階 視聴覚室からA棟外壁
どこから中庭のプラザを見ても1階の床面が見えないくらい渡り廊下ブリッジが密集しています。
A棟とB棟を覆うスクリーンとブリッジと屋外階段
A棟と屋外階段
屋外階段も含めてそれぞれの階段のデザインが全て異なっているようです。それだけでなく、屋外階段の形状が最上部と基準階部で変えてあります。ふつうそのまま通すと思いますがこういう部分もバラエティーに富んだにぎわいを感じるデザインの一部なのかもしれません。すごい労力を必要とする設計だと思います。なかなかマネのできることではないように思います。
A棟 2階 創作活動室
パンチングメタルのスクリーン越しに電車が通るのが見えます。遮音を考え電車の通る外壁側を躯体で少しでも遮音をしようと考えると思いますが、パンチングメタルのスクリーンとして電車の通る面に対してサッシで景色がパンチングメタル越しに透けて見える開放性を得ています。
階段が登れないようにチェーンがされていました。公園のように自由に散策というわけにはいかないのでしょうか。回遊動線になる棟を渡る外部鉄骨廊下と屋外バルコニー部は施錠されていて避難時以外は利用できないようになっていました。建物自体は1つの役所が管理しているように見受けられますが、実際は各課それぞれに管理が振り分けられていて、階や部屋ごとに管理者が違うのかもしれません。そのことを推察させるのは、いろいろなフロアに事務局があったからです。
金色の東武鉄道の特急スペーシアが通過していきます。
B棟 1階 エントランスホール
2方向の前面道路へ向けてガラスカーテンウォールが構成され視線をコントロールするパンチングメタルのスクリーンがはずされています。下町の景色が見えて、広がりが感じられるエントランスホールの構成が勉強になります。
ブリッジ
プラザの水盤に水はありませんでした。
B棟 4階 ドーム ガラスカーテンウォール
B棟 4階 ドーム ロビー
青いオブジェとプラネタリウムの外形パネルがホールで見えて、この眺めがパンチングメタルとガラスのディテールの溢れた空間体験の中で、小休止的に感じました。
ドーム
プラネタリウムの内部を見学させていただきました。
前面道路からの建物全体を覆うパンチングメタルスクリーン
パンチメタルのスクリーンがA棟とB棟を包むように覆われています。前面道路幅員はとても狭く近隣には古い木造住宅が密集しています。古い木造住宅の町並みの中に突如として現れる現代建築です。線路の騒音が聞こえます。周辺の街並みに対して通り抜けのできる2つの間口があります。1つの間口は近隣の住宅の高さにマッチしています。明治通りにつながる写真の正面の大開口は道路突き当たりを受ける形で大きな開口となっています。