住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
山形県米沢市にあります山下設計さんによる設計の市立米沢図書館・ナセBA・米沢市民ギャラリーを見学してきました。
職員の方の許可を頂き外観と一部の内部撮影をさせて頂きました。新建築 2017年3月号に発表された作品です。
片岡は学生の時、大森ベルポートに入居していた時代の山下設計さんで、短期間ですがアルバイトをさせて頂いたことがあります。
山下設計に就職した大学の先輩に従って大きなビルの基本設計図書の修正手伝いをしていました。
当時、大森ベルポートのレストラン街で1000円するような高い夜食をバイトにご馳走してくれる先輩でした。
先輩個人の徳の高い人間性によるところもあるかと思いますが、学生ながらにやはり大手組織事務所はすごいと感心した思い出があります。 特徴的な壁柱はプレストレストコンクリートを使用しているようです。 エントランスの床仕上げが途中でインターロッキングブロックからレンガに変わっています。 オープンギャラリー 床の浸透性コンクリート強化剤磨き仕上げと壁のコンクリート打ちっぱなしにコントラストがあることが勉強になります。 ロビー ガラス昇降路のエレベータと防火扉とコンクリート壁 ロビーから図書館への入り口 銅像がコンクリート打ち放し壁を背景にしてマッチしていると思いました。 オープンギャラリーから図書館にのぼる階段 両壁面をコンクリートで覆った階段から、遠くまで視線が通り方向を示して、いっきに大空間に飛び出せる空間構成はとても素晴らしいです。とても貴重な体験ができました。 図書館開架閲覧室 貸出・返却カウンター前 4層が吹き抜ける大空間に圧倒されます。 中2階の多目的スペース 上階の本棚は閉架書庫で一般の人は入れません。
回廊になっていて一般の人がぐるぐる回遊できればさらに素晴らしいだろうと思いますが、防災的には、防火シャッターが必要になります。
このような解放感を生むのは不可能なのだと思います。 多目的スペース 厚さ250mm長さ600mmの断面のプレストレスト・コンクリート耐震壁柱がXY両方向にあります。
素晴らしいです。
見たことのないすごい細長比です。 1階ギャラリー 展示間仕切りの可動レールと防炎垂れ壁が見えます。照明が天井躯体に直付けです。床仕上げにはカッター溝の誘発目地がありました。 1階ギャラリー XY両方向に耐力壁がありギャラリーの展示壁に利用されています。
耐力壁が展示スペースのアレンジに制約を加えるという考えもあるかと思いますが、コンクリート壁の詩的な表現につながっていると思いました。 階高が階段状にセットバックしている構成が周辺への圧迫感を軽減しています。
また、階段状にして最頂部からの落雪を受け止める効果が期待できるそうです。
プロポーション決定の合理性として大変説得力があり勉強になります。 歩道とエントランスの階段と外壁ディテール 1階裏の搬入口 開口部ディテール 外部コンセントにニッチが彫られています。
かっこいいのですが、断熱欠損になると思います。いいのでしょうか。 1階裏の搬入口 窓周りのディテール 1階裏の搬入口 外装木の留部 1階裏の搬入口 よくよく考えてみますと外断熱材の木が深い縦目地で切断されています。 外壁に外断熱として100mm厚地元産杉を使用しているそうです。
断熱材として木を使うとありますが、私は設備設計一級建築士なのでその性能に大変興味があります。
熱伝導率λで比較すると、木は0.15~0.25 W/cm K 発泡ポリスチレンなどは0.03 W/cm K前後です。
つまり単純に考えて15倍以上発泡ポリスチレンの方が断熱性はあります。
木100mm厚に相当する発泡ポリスチレンはたったの7mmです。
本当は外断熱をこの地域で設計するのであれば、発泡ポリスチレンで50mm程度必要だと思います。
木に換算すると750mm必要になると思いますので現実的ではありません。
ですので、木を断熱材として使う設計者は普通いません。
私はマンションの設計が多いので用途が違うという理由もあるかもしれませんが、木を断熱材として使うことに優位性があると評価されることに合理性がどれだけあるのか疑問を感じます。
だれでも化学製品より自然素材の方が体に優しいと感じます。
この事例が、性能を理解しない建築デザイナーだけでなく一般の人々にも、雪深い東北の地域で化学製品のウレタン等を使わずに、木が断熱材になると誤解を与えるのではないかと思いました。
断面図を拝見すると反りを防止した厚さ100mmサーモ処理木材と躯体コンクリートの間に空気層があり、躯体外側には厚さ15mmのフェルトが貼られています。厚さ15mmのフェルトにもある程度断熱性能が依存されているのではと思いました。
コンクリート躯体を蓄熱体として利用したとても高度な技術によって成立していると思います。
地元産の木を利用して外装材としての意匠性の相乗効果があってはじめて合理性が獲得されているのだと思いました。
米沢市立図書館
公式ホームページ→http://www.library.yonezawa.yamagata.jp/wordp/
開館時間
平日4月~9月 10:00~20:00 平日10月~3月 10:00~19:00 土・日・祝日 9:00~19:00 休館日:毎月第4木曜日
なせBA
公式ホームページ→http://www.library.yonezawa.yamagata.jp/naseba/
住所
〒992-0045 山形県米沢市中央1丁目10番6号 ナセBA 市立米沢図書館 TEL:0238-26-3010 FAX:0238-26-3012 よねざわ市民ギャラリー TEL:0238-22-6400 FAX:0238-26-0036 E-mail:naseba@library.yonezawa.yamagata.jp
まちなか駐車場
住所:山形県米沢市中央1丁目9 駐車場の場所は建物以外の場所にあります。わかりにくいので住所検索で確認するなど注意してください。 駐車台数:153台(うち身障者等用3台) 駐車料金:30分ごとに100円 ナセBA(図書館・ギャラリー)、文化会館をご利用の方は、3時間まで無料 ※満車の場合は平和通り駐車場をご利用ください。1時間分無料割引いたします。 ※駐車券をお持ちの上、それぞれの施設カウンターにてお手続きください。 上記の情報は2018/10/8に収集した情報です。詳しくは公式ホームページをご覧ください。