リビングから光庭越しのキッチンを眺める
スケルトンとは
骨組みのことで、構造体のことをいいます。この建物では鉄筋コンクリート造なのでコンクリートがむき出しの状態のことをイメージしていただければとおもいます。インフィルとは内装。設備・間取り等のことです。
この設計実例では、躯体の設計も片岡直樹建築設備設計一級建築士事務所で行っておりますが、スケルトンの状態までゼネコンが施工し引渡し後、内装をゼネコンとは別の内装工事施工業者が行いました。
中古マンションなどで既存の内装設備を全て取り払った状態から作り直すスケルトンマンションリフォームをお考えの方の参考にご覧下さい。
バスルームから光庭を経て階段までの見通し
南に面するバスルームの光と風が部屋奥へと導かれるだけでなく、視線も通すことで部屋の中に長い距離を作り出して、奥行きを感じられるのびのびした気持ちよさが得られるようにしました。
光庭を通して客間とつながるベッドルーム
この部分では北側に階段・エレベーター等共用部プランの制約が無く、南北通風を直接とることができる場所でした。そのため、唯一の北側の部屋である客室も風通しのよい気持ちのいい部屋になっています。
光庭があることで回遊動線が生まれて、部屋の中で他の部屋を外部を介して眺めることが出来ます。
この部屋から自分の家を見ることができる家を善しとする思想は、日本の住宅設計の大御所で、東京藝術大学教授の故吉村順三先生の著書『建築は詩』にあるものです。
住宅設計において、この本の思想を善しとする建築家はとても多いのではないでしょうか。今回の設計で悩んだ時、何回もこの本を読み返し吉村順三先生の思想に立ち戻ろうと心がけました。
また、もう一人の住宅設計の大御所である故宮脇檀先生の本もよく読みました。宮脇先生の本は思想というより実務的な啓示が多くあるように感じます。
そのなかにはどうしても時代に合わないものもあるように感じますが、やはり原点ということでは、ここになると思います。
マンションではバルコニーや躯体に守られているため、外部の気候情報がなかなか入ってきません。
雨、風、雪、晴れているのか曇っているのかの関心が薄れがちです。戸建のような地面に面した家に近い情報が得られるよう、この光庭から気候が感じられるようにしています。
ダイニングからキッチンを眺める
床仕上は全面TESS床暖房です。フローリングは、300幅の床暖房用練りつけ合板を使用して、天然木の突板の柄を楽しみながら温度収縮や防傷性を考慮して樹脂コーティングタイプを選定しています。
キッチン床は、600角のタソスホワイトタイルとして目地をフローリングと合わせています。仕上げが異なっても目地の連続性を確保しています。
更に、外部バルコニーにイペー材のデッキを設けています。これも目地を合わせ、床レベルも合わせることで、バルコニーとリビングダイニングの床が連続したディテールとして設計して目地ピッチも合わせています。
デッキバルコニーについて
バルコニーにデッキを設けるとリビングから床の連続感が生まれ広がりが感じられて気持ちのいいものです。
片岡直樹設備設計一級建築士事務所では、高層階でバルコニーデッキを設ける際、風の巻き込みによるデッキの浮き上がりに配慮して、防水層を見込みながらデッキ柱脚が浮き上がらないよう工夫しております。
また、サッシとの取り合いで網戸のメンテナンスを考慮しながらリビング床レベルとバルコニーデッキレベルがフラットになるよう設計しています。
リビングから光庭を介してダイニングを眺める
サッシ開口高さとバルコ二ー庇の設計について
写真右手が南面で夏至と冬至の太陽の南中角度差を考慮しながら、梁形とバルコ二ー庇ラインからサッシ高さを導き出しています。そのため、若干、梁下端より上側までサッシがあります。
そうすることで、冬でも日差しがあるときには部屋奥までめいいっぱい日差しが入り、暖かい居心地のいい場所ができるよう設計しています。
環境設計の観点でいいますと、窓から室内に取り込まれる太陽エネルギー量ダイレクトゲインが最大となるよう設計しています。
Low-Eで熱線が入り込まない遮熱仕様のガラスを使用して、窓辺の熱貫流の大きいペリメーターゾーンの熱負荷を軽減する設計の場合は、このような手法はあまり意味がありませんが、今回は予算の関係で複層ガラスではありますがLow-Eではないため、このような手法を使いました。
バルコニー庇のある住宅・マンションでは、このような機械設備の空調や電気に依存せず、太陽エネルギーや方位。風向等を利用したパッシブ設計が第一に重要だと考えています。
その上で、足りない分を床暖房やエアコン空調等で補うのが理想だと考えています。
Low-Eガラスとは
Low-Eガラスとは、板ガラス表面にイオンをぶつけて金属膜を作った商品で、断熱性能、遮熱性能があります。
太陽の光は、赤外線(熱エネルギー)、可視光線(目で見ることのできる光)、紫外線(色あせの原因)からなっています。
Low-Eガラスは可視光線を取り入れ、紫外線など有害なものを通さない特徴があります。複層ガラスにこのLow-Eを貼る位置によって2種類の性質を持つ複層ガラスが出来ます。
ひとつは、複層ガラスの空気層の室内側ガラスに金属膜を貼った高断熱Low-E。もうひとつは、空気層の室外側ガラスに金属膜を貼った遮熱高断熱Low-Eです。
高断熱Low-Eは寒い地方で太陽の熱を取り入れ室内の熱も逃がしたくない場合、遮熱高断熱Low-Eは太陽熱をさえぎり、室内熱を逃がさない仕様です。東京の場合、Low-Eといえば通常遮熱高断熱仕様のLow-Eになります。
光庭を3層先の天開口まで見上げる
この住宅で特徴的なのは3階メゾネットつまり3階建てということですが、南面しか窓開口を取る事が、マンション共用部プラン上、構造上できない制約がありました。
その中でも通風を確保して、さらに北側の窓に面していない階段室や北側居室を自然光で照らしたいと検討しました。その中で南面開口と光庭開口で3層で重力換気が起こるよう計画しました。
また、単なる重力換気だけでなく光庭は煙突効果も望めるため大きな換気効果が見込めます。
省エネルギー環境建築の要素を盛り込んだ設計手法としています。
重力換気について
重力換気とは、室内外の温度差により空気に重量差が生じて発生する動力を用いないで自然条件を利用した換気方法をいいます。
煙突効果について
煙突効果とは、煙突の中の暖かい(軽い)空気の下に、冷たい(重い)空気が潜り込み、暖かい空気を押し上げる効果のことです。この押し上げる力を通気力、ドラフトと呼びます。
鏡面ステンレスが光を遠くまで届ける
パッシブ設計のなかで光ダクトという手法があります。
光ダクトとは内部が鏡面になっているダクトに自然光を取り込み、反射を利用して光を搬送し、照明用の光源として利用するものです。
この光庭は鏡面ステンレス貼り仕上げとサッシガラス面で構成されています。
片岡直樹建築設備設計一級建築士事務所では、見た目だけのデザインではなく建築設計者として、居心地の良い空間を作ることが大切だと考えております。
そのために、仕上の美しさだけでなく、空気環境や光環境のデザインコントロールに注力しています。
光庭を内包した子供室
全ての居室がこの光庭に面するようにデザイン設計しています。この光庭を通して他の階や別の部屋を外部を通して見とおすことができます。家族間のコミニュケーションの向上や家の楽しさにつながる装置となっています。
光庭を内包した子供室
子供室には夏季換気のための光庭の欄間部開口の他に、居室建具上部にホイトコを設けています。ホイトコとは、建具金物の一種で欄間が開くようになっています。
窓を閉めて、扉も閉めていても子供室と階段室の空気環境を一体的にして通風を確保で来るようにするために設計しています。
シャワールームと洗面・トイレの3IN1
手前にはトイレがあります。FRP防水の3IN1で強化ガラスフレームレス間仕切りとして設計しています。
床暖房方式ではなく、床タイルはTOTOサーモタイルとして足さわりのヒヤッと感を軽減するようにしています。また、3乾王という換気・暖房・乾燥機能のある浴室親子換気扇を設けています。また親子機能が付いていまして、浴室部の換気以外に換気ダクトで他室を同時に換気する機能があります。
3IN1とはバス・トイレ・洗面が一つの部屋になっていることで広く見せる効果があります。