テナント違法工事と思われる外壁・庇の落下事故
2018/1/24品川区でビルの外壁と庇(ひさし)が落下して小学生がケガをする事故のニュースがありました。
4階建てビルの3階と4階の外壁にあった木製の庇(ひさし)が落下したようです。
用途地域は近隣商業地域で品川区は全域が防火地域か準防火地域の指定がかかっていますので、この建物規模では耐火建築物とする必要があると思われます。道路幅員は大きいので延焼ラインには抵触していないと思われます。そう仮定しますと、外壁や庇(ひさし)を木で作ることは不可能なはずです。普通、建築士に依頼してこのような仕様で庇や外壁を仕上げることは考えられないのではないでしょうか。
トラブルにならないために、ビルオーナー様やテナント経営者の方の参考になれば幸いです。
予想される工事区分図と原因
建物本体はビル所有者が4階建て耐火建築物を建設したと思われます。外壁を見ますと1階店舗 2・3階同一テナント飲食店で4階が事務所店舗のようなテナント様の入居形態と思われます。この外壁はオーナー所有の耐火建築物の上にテナントがそれぞれに看板や外壁を施工して取り付けたと予想されます。
原因として予想されるのが、木の腐食による劣化というのが考えられます。しかし、そもそも木の庇は耐火建築物で施工することはできません。原因は確認申請が不要な工事で建築士に依頼せず施工業者に依頼して違法な仕様の工事となってしまった事と推察されます。
どうしても和風居酒屋の木造の雰囲気を演出するのであれば、木製ではなく、鉄骨下地で不燃野地板の屋根として、見上げの軒天に不燃木を貼る仕様でなければ適法とはならないと思います。
聞いていなかった。知らなかった。ビルオーナー様・テナント経営者様の責任は逃れられません。
店舗オーナー様やビル所有者様が工事業者にダマされたと後で抗弁しても、そもそも無資格者に依頼している時点で違法性が問われてしまいます。
建築基準法98条があります。
第98条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
一 第9条第1項又は第10項前段(これらの規定を第88条第1項から第3項まで又は第90条第3項において準用する場合を含む。)の規定による特定行政庁又は建築監視員の命令に違反した者
二 第20条(第一号から第三号までに係る部分に限る。)、第21条、第26条、第27条、第35条又は第35条の2の規定に違反した場合における当該建築物又は建築設備の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物又は建築設備の工事施工者)
三 第36条(防火壁及び防火区画の設置及び構造に係る部分に限る。)の規定に基づく政令の規定に違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物の工事施工者)
四 第87条第3項において準用する第27条、第35条又は第35条の2の規定に違反した場合における当該建築物の所有者、管理者又は占有者五 第87条第3項において準用する第36条(防火壁及び防火区画の設置及び構造に関して、第35条の規定を実施し、又は補足するために安全上及び防火上必要な技術的基準に係る部分に限る。)の規定に基づく政令の規定に違反した場合における当該建築物の所有者、管理者又は占有者
2 前項第二号又は第三号に規定する違反があった場合において、その違反が建築主又は建築設備の設置者の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主又は建築設備の設置者に対して同項の刑を科する。
確認申請が不要な工事で建築士がいない工事は違法性に気づくことができません。
不特定多数の人が利用する飲食店・物品販売店舗・旅館・福祉施設・倉庫など特殊建築物の用途変更などで用途変更面積が100㎡を超えると工事着手前に確認申請が必要になります。
確認申請が不要でも建築基準法に適合させる必要があります。
面積変更や主要構造物に関係ない外壁工事や用途変更を伴わない内装工事では、確認申請が不要ですので、施工業者に一任しても違法にならない場合は建築士が不要です、しかしそれは、施工業者が単独で建築基準法に適合した工事をできる場合です。建築基準法や消防法などに適合させる知識が施工業者にない場合は、建築士に依頼して適法な改修工事を行わなければ違反建築物になってしまいます。この事故のケースのように、違反なだけでなく事故にいたる場合がとても怖いです。
トラブルになってからの相談では遅すぎます。
時々、弊社事務所にも施工資格の無い業者様がお客様から工事を請負った後で、施工できずにトラブルになり相談される方がいらっしゃいます。残念ながら工事がはじまってからでは、やりなおし工事の追加費用や工期が発生するのでお店の経営者である施主の了解が得られないのでどうにもならないことがほとんどです。
ビル所有者様はテナント工事の内容を確認してください。
ビル所有者様は、テナント様が入居や改装を希望された場合、内装・外装工事をすることになります。このとき、建築基準法や消防法などの法令違反がないように注意しなければなりません。家賃収入と契約の確認だけで、あとはテナントまかせで工事を進めていくと、ビル本体の価値を失うだけでなくリスクやトラブルを背負うことになりかねません。対策として、建築士に相談するなど、知り合いの建築士がいない場合は、ビル管理委託をされている不動産会社の方やPM(プロパティーマネージメント)会社さんに窓口になって頂くことをオススメします。
店舗オーナー様は、営業や改装を計画する時、建築士に依頼することをオススメします。
お店の営業をしようとお考えの際に、いろいろな事情で無資格業者に依頼して、建築基準法上の不備や違反が発見されると営業の休止や改善費用負担に悩まされトラブルとなります。対策として、違反や事故が起こる前に施工業者に直接依頼せずプランから計画する建築士に依頼することをオススメします。
店舗デザイン設計はおまかせください。
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