敷地の一部又は全てが、都市計画区域内で将来 道路の拡幅事業や公園計画などがあるケースの土地があります。このような土地をお持ちの方で、賃貸経営でマンションを建てようとお考えでも、建築制限で鉄筋コンクリート造をあきらめて、ハウスメーカーの重量鉄骨造アパートを建てる方がいらっしゃいます。
マンション設計者の私の考えでは、その方は、2つの失敗をしていると思います。
都市計画区域内でアパート・マンション経営をお考えの方の参考になれば幸いです。
一つ目の失敗
重量鉄骨造は、床仕様が2種類あることを知らなかった。
重量鉄骨造でも、床はコンクリートとすることができます。
ハウスメーカーの重量鉄骨造は、床がALC軽量気泡コンクリート(=○○パレス21さん)や中空セメント板(=○○水ハウスさん) 薄いプレキャストコンクリート板(=○○ワハウスさん)を用いた置き敷き乾式工法です。これは、工期の短縮だけでなく躯体重量軽量化につながり工事費を安く抑えることに直結します。
しかし、賃貸アパートで一番問題となる、騒音トラブルの原因もこの建物軽量化にあります。
下記の物理式をご覧ください。
TL(透過損失)=20・log・F(周波数Hz)・M(材料の面密度kg/㎡)-44db
騒音を防止する為の遮音性は、躯体重量Mに比例します。
重量鉄骨造で床を鉄筋コンクリート造として、マンションと同じ上下階の遮音性能を得ることができます。
同じ重量鉄骨造でもハウスメーカーはアパート、マンション設計者に依頼すればマンションが建てられます。
デッキプレート又はフラットデッキにコンクリートを打設する事が重量鉄骨造は可能です。
このデッキプレートやフラットデッキはコンクリート打設時の型枠を省略するためのものです。
また、この工法は、構造的には剛床仮定と言って、構造計算上地震に有利な床板として計算することができます。
デッキスラブは、デッキプレートが山形の形状をしていて、構造安全性を満足させるだけであれば、コンクリート床スラブより薄くなります。しかし、重量が少なくなるので、遮音性はコンクリート床スラブに劣ります。
いくつかのテクニックがありますが、もっとハイグレードな仕様として、コンクリート床スラブを打設することも可能です。
2つ目の失敗
計画道路などの都市計画区域にかからない部分の建物が残せる方法がある事を知らなかった。
ハウスメーカーの重量鉄骨造は、計画道路が決定した後、建物を分割出来ない。
ハウスメーカーの重量鉄骨造は、建物重量を軽量化していて、部材が細いので壁の中に柱を入れています。柱の位置に自由度がありますが、それは、木造の壁量計算と同じ方法なので、将来、敷地が減りプランが変わり、壁量が減ると建物として成り立たなくなります。
ラーメン構造であれば、壁量ではなく、柱と梁があれば良いのでプランと構造躯体への影響はありません。
ハウスメーカー重量鉄骨造は建物すべてを解体する事になりますが、柱梁剛接合であるラーメン構造の重量鉄骨造であれば、都市計画区域外の敷地の建物を残すことができ、引き続き賃貸経営で収益を継続できます。
道路などの都市計画区域内に組み込まれる土地建物は、費用と敷地内すべての解体費が支払われますが、残った敷地に再建築する建物の費用は、保証・支払いはされません。
計画決定していない状態で、計画線が敷地内にあるだけでは、将来の分割を考える必要は無いと言うハウスメーカーの営業トークがあります。
計画決定していなければ、10年はそのままであると思います。しかし、賃貸経営の収支を考えて提案する不動産屋であれば、20年出来れば30年以上建物が建ち続けていなければ、収益が得られず賃貸経営をする意味がないと言います。
そのためにも、道路などの都市計画区域内に組み込まれた土地建物の保証費用で、残った敷地に再建築するのではなく、分割して建物を残せる方法を選択していれば、保証費用を再建築費に奪われなくてすんでいたのです。
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