住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
山形県酒田市にあります『土門拳記念館』です。
職員の方の許可を頂いた範囲で撮影させて頂きました。
設計は、谷口吉生先生です。
新建築1983年 12月号に発表されています。
40年以上前の建築ですが、プリミティブなモダニズム建築として、片岡直樹の理想とする至高の建築です。
谷口吉生先生の作品のなかでも、屈指の珠玉の名作です。
飯森山と人口池に調和したスケール、空間の対比を明確にする 人工池に沿ってこの建物を特徴づける長く連続した石の壁面。
建築の硬い鋭角的な造形が、柔らかい曲線で構成された砂丘や人工池の姿と干渉して、自然をよりいっそう引き立てています。
人工池から土門拳記念室への眺め
写真家 土門拳氏を記念し、写真のみを展示する目的でつくられた美術館です。
人工池に沿って長く連続した石の壁は、この建築の外観の象徴的な造形を特徴づけています。
アプローチ
屋根:アスファルト防水砂利押さえ
外壁:コンクリート打放しの上アクリルカラークリア塗装
花崗岩JP仕上(シェニート・モンチーク 関が原建材)
建具:耐候性鋼形鋼 酸化推進処理塗装仕上げ ヤマキ工業
中庭
連段に立つ彫刻はイサム・ノグチ 『土門さん』
中庭
日本の伝統的な建築や庭園にみられる回遊式の空間構成は、日本人の心を追求した土門拳氏の作品性から着想しているそうです。
中庭
『流れ』という同じモチーフでありながら、イサム・ノグチ氏の彫刻がある中庭は、直線的な造形。
視聴覚室前にある勅使河原宏氏の庭は、曲線の構成。
対比があります。
中庭
中庭の稲田石の連段は、せせらぎの水音。
竹林が風をそよぐ姿。
中庭の眺めに変化を与えることが意図されているそうです。
ブリッジ
壁面と一体となったブリッジは、人工池を散策する遊歩道の一部となっています。
ブリッジの先にある東側階段
企画展示室
床:ナラフローリングt15
壁:コンクリート突付き仕上
天井:PBt12 ビニールクロス貼り
主要展示室
展示室の一部が飯森山の裾野深くに一部埋めて配置されているのは、写真家土門拳氏が大戦中に大切な写真のネガを土中に埋めて守ったという話からきているそうです。
自然光を避け、深い土中に作品の不滅を念じ、そして陽ざしで変わる水の色と四季の移ろいを通して、生命の喜びを感じる。二つの空間の対峙が意図されているそうです。
床:ナラフローリングt15
壁:コンクリート突付き仕上
天井:アルミルーバー
視聴覚室から庭を見る
枯山水 視聴覚室前庭 勅使河原宏作 『流れ』
勅使河原宏氏は、草月流の創始者・勅使河原蒼風の長男で映画・陶芸など多才な第三代家元です。
片岡は華道は不勉強なのですが、石の配置が「真副控(しんそえひかえ)」という華道の理論にもとづいた配置であると聞いたことがあります。
とても深い名庭園です。
物語性がすばらしく、登り庭になることで完璧にコントロールされた庭園です。
床:フェルト下地カーペット敷込み
壁:PBt12ルムート貼り
天井:岩綿吸音板AEP
池に面した土門拳記念室
ギャラリー先端から土門拳記念室への眺め
ギャラリーから中庭をみる
内部空間は簡潔なものとし、みえがくれする庭園と、展示作品のみが視覚的に強調されることが意図され、日本の伝統的な回遊式の方式がとられています。
トイレ
壁:コンクリート突付き仕上と床:花崗岩JP仕上の取り合わせが美しいです。
トイレ
コンクリート突付き仕上にそそがれる光のグラデーションが、マテリアルを引き立てていて美しいです。
土門拳記念館
URL:http://www.domonken-kinenkan.jp/
所在地:山形県酒田市宮野浦飯森山北13
開館時間:9:00~17:00 (入館は16:30まで)
休館日:4月~11月/無休 12月~3月 毎週月曜日 年末年始休業
*このほか展示替休館あり。詳細は展覧会情報・イベント情報、スケジュール情報の各ページでご確認ください。
2023年8月の情報です。詳しくは土門拳記念館のホームページをご覧ください。