住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
長野県長野市の城山公園内で、善光寺の近くにあります長野県立美術館です。
職員の方の許可を頂いた範囲で撮影させて頂きました。
設計は、宮崎浩先生/プランツアソシエイツです。
宮崎浩先生は、設計実務者の片岡の知る限りでは、既製品サッシのデザインをされている唯一の建築家で、YKK APのARMSシリーズで大変有名だと思います。
費用・法令・使い勝手などいろいろな制約はありますが、ARMSシリーズのシャープなデザインのサッシは、ここぞというところで、是非使いたいサッシです。
片岡も市ヶ谷の賃貸マンションのファサードのサッシでYKK AP ARMSを使って設計しました。
その年の一番すぐれた建築におくられる賞である2022年日本建築学会 作品賞・2021年度 JIA日本建築大賞など多くの建築賞を受賞されています。
新建築2021年6月号に発表されています。
屋上広場(風テラス)から善光寺が正面にあります。
旧信濃美術館(林昌二先生/日建設計)を建て替えて、善光東公園・城山公園、隣接する東山魁夷館、敷地東側道路という3つの異なるレベルが「ランドスケープ・ミュージアム」として設計されています。
美術館は展示・収蔵機能を拡張し、旧館の3倍以上の規模となっているそうです。
ウッドデッキ舗装:デッキ材:イペ材t=20×105@110㎜(鋼製根太:St角‐100×50×2.3@900HDZ)
下地鉄骨S t H‐100×100@2400㎜HDZ
すばらしい水平性の大庇
大庇は長さ36m、奥行6mで、跳ね出したコンクリートスラブの先端は、5本の鉄骨柱φ=110 t=24㎜で支えられています。
屋上広場はプレストレス鉄筋コンクリート梁を、スラブから逆梁状に飛び出させた屋根面に二重防水をし、木デッキ、洗い出しPC版、石貼りPC版の3種類の仕上が使われています。
手すり:強化ガラスt=8+8㎜ L型カウンター:天板 人造大理石t=24㎜
屋上広場:PC平板洗出し上げt=125㎜
下地鉄骨St H‐100×100@2400HDZ ズレ止めPL‐6×80L=200 スペーサー
パラペット天端:高靭性ウレタン塗膜防水(GO‐JIN V)
防水立上り:アスファルト防水+保護モルタルt=20㎜+ウレタン塗布防水
ウレタン塗布防水 通気緩衝複合工法 普通コンクリート金ゴテt=80㎜
(溶接金網Φ3.2×100×100)断熱材:XPSt50アスファルト防水保護密着断熱工法(Al‐1)
コンクリート金ゴテ直押え(RCスラブ・勾配1/100)
屋上 大庇詳細
屋上広場の大庇の軒天は、佐久ヒノキの木製ルーバーです。コンクリート屋根のたわみを抑える構造材の効果があるそうです。
屋根:コンクリート打放しt=100㎜ウレタンゴム塗膜防水
鉄骨梁:H‐400×200×8×13 P L‐6×50 H‐250×125×6×9
先端庇:St FB9×150㎜加工 溶融亜鉛メッキ+リン酸処理
木ルーバー:45×120@90㎜県産材ヒノキ材耐候性処理
壁欄間部:セメント系薄塗左官仕上げ
外部床:PC平板洗出し仕上げt=125㎜ 下地鉄骨:St H‐100×100@2400㎜HDZ
カフェ 天井:GB‐R t=12.5+12.5㎜EP 室内床:フローリング t=15㎜(クリ材)
善光寺・善光寺東公園・城山公園側の西側外観
屋根端部:エコグリーンマット(下地:L‐50×50×6)+メッキ鋼板(下地:L‐50×50×6+ L‐65×65×6)
先端見切:St FB-9×180+St PL-t=2.3㎜曲げ 溶融亜鉛メッキ+リン酸処理テープヒーターW95
外壁:セメント系薄塗左官仕上げ材 左官下地 t=6㎜ メッシュ下地 t=2㎜ 仕上げt=2㎜
パラペット断面詳細:屋上緑化:人口軽量土 t=150㎜ (耐根シート+透水シート)ファインフロア 下地鉄骨:H-125×125×6.5×9
アスファルト防水保護密着断熱工法(AL‐1) 普通コンクリート金ゴテt=80㎜(溶接金網φ3.2×100×100)断熱材:XPSt=50㎜ 立上り保護モルタルt=20㎜ コンクリート金ゴテ直押え(鉄筋コンクリートスラブ・勾配1/100) 水抜き開口W400@1200程度
東山魁夷館とつながる連絡ブリッジ
床:花崗岩JP t=25㎜(シルバーグレー)
中谷芙二子氏による「霧の彫刻」
東山魁夷館東側から水辺テラス越しに善光寺を見る。
水辺テラスは、公園の一部として、美術館の開館時間とは無関係に常に利用が可能です。
外壁は東山魁夷館と向かい合う素材として、5㎜厚のアルミ切板パネルが使われています。デッキには、善光寺の石垣などに使われている松代芝石を使ったベンチがあります。
北側・東山魁夷館側
水辺テラスの水盤が、訪問時はありませんでしたが、壇状に水盤と滝の流れがあり静寂を演出しています。
水盤1:底石:花崗岩 JP t=30㎜(G332)
連絡ブリッジと北側外壁カーテンウォール
エキスパンションジョイントの無い納まりです。
非常に薄いスラブとサッシと一体化した方立柱、薄い屋根が素晴らしい透明性をつくり出しています。
善光寺側の山並みへとブリッジを通過して見通すことができるのは、ブリッジのディテールが透明性のある優れた設計であるからだと気づかされます。
離れたところにある手前の手摺ピッチとガラス方立の割付・床石の割付が合っています。
シビれます。
東側道路から水辺テラスに下りていく階段
5mmアルミパネル外壁足元と階段 斜面の芝、敷石 床版の構成が美しいです。
勉強になります。
エントランスホール
最高天井高は12.8m。各展示室にチケットカウンターがあり、展示室以外は無料ゾーンとして開放されています。
光膜天井:トップライト:複層ガラス:FL12+A12+網入10
天井:GB‐R t=12.5+12.5㎜EP
1時間耐火間仕切りガラス壁:パイロストップガラス t=23㎜ (高透過ガラス t3×6+t1×5)
内外がつながる大階段と連絡ブリッジ
エントランスホールの内階段と水辺テラスの外階段が、ガラスカーテンウォールをへだてて連続しています。
東山魁夷館へ続く連絡ブリッジは、東山魁夷館側にエキスパンションジョイントがあり、長野県立美術館側はエキスパンションジョイントが無いそうです。
ブリッジを建物本体で吊っていますが、梁せいの無いH250*250*9*14がハシゴ状にくまれただけで、たわみもなく21mある長いブリッジを成立させていることに驚きます。
連絡ブリッジの床下のガラス枠も見えないディテールとなっています
エントランスホールからの見上げ、連絡ブリッジの構造は250 ㎜のH鋼25㎜厚の鋼板で挟んだもので、カーテンウォール部分にはエキスパンションジョイントを設けずシンプルに納めている。エントランスホールの階段と水辺テラスの階段は内外が繋がって一つの階段に見れるよう仕上げとレベルを揃えている。
エントランスホールより東山魁夷館を見る。
連絡ブリッジはスパン約30m、開口部はスチールマリオンで支持された最大約1.2m×7.4mに及ぶ大型複層ガラスのカーテンウォール、断熱性が高く、透明性の高い新型サッシを開発されたそうです。
軒天:アルミパネル t=5㎜
連絡ブリッジ2階東山魁夷館からの軸と善光寺本堂に向かう軸が交差しています。
連絡ブリッジ床:花崗岩 JP t=45㎜(G603湖北)
エントランスホール
ガラスカーテンウォールが隔てていますが、連続した階段が室内外の一体感を演出しています。
エントランスホールの内階段(写真下側)と水辺テラスの外階段(写真上側) 足元ディテール
展示室前の2階廊下より城山公園を見る。
床と屋根は、跳ね出しのスラブで、柱のないパノラマビューになっています。
展示室前の2階廊下ガラスカーテンウォールディテール
スラブがガラスカーテンウォールにぶつかる先端が、ガラス床になっています。層間区画のスパンドレルが無いディテールです。サッシは新開発の高断熱仕様だそうです。
連絡ブリッジより、水辺テラス越しに東山魁夷館を見る
連絡ブリッジ屋根:完全嵌合式平滑葺き 溶融亜鉛メッキステンレス鋼板 t=0.4@455㎜
(裏張り:発泡ポリスチレンフォームt=4㎜)バックアップ材:ビーズポリスチレンボードt=40㎜
改質アスファルトルーフィングt=1㎜ 野地板:木毛セメント板t=40㎜(30分耐火構造)
柱:PL-65×341 天井:GB‐R t=12.5+12.5㎜EP
連絡ブリッジ床:花崗岩 JP t=45㎜(G603湖北)ベンチ:ローボーイ(空調設備)組込
柱:PL-40×60@3600㎜
2階 アートラボ付近の階段
1階 交流スペース前の階段
地下1階 ホワイエ
地下1階 エレベーターホール
1階 ミュージアムショップ前の北側回廊
洗練された構成とディテール満載のたてもので、勉強させて頂きました。
長野県立美術館
所在地: 〒380-0801 長野県長野市箱清水1丁目4−4
開館時間:9:00~17:00(展示室入場は16:30まで)
休館日:毎週水曜日(原則、水曜日が祝日の場合は翌平日)、年末年始
電話番号: 026-232-0052
観覧料:コレクション展(本館NAMコレクション・東山魁夷館コレクション 共通)
一般:700(600)円
大学生及び75歳以上:500(400)円
高校生以下 又は18歳未満:無料
※ ( )内は20名以上の団体割引 及び各種割引
※ 企画展は展覧会により料金が異なります。
上記は、2023年10月の情報です。詳しくは長野県立美術館のホームページをご覧ください。