住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
千葉県千葉市中央区松波にあります集合住宅 RIGATO F です。
外観のみの撮影です。
設計は、篠原聡子先生です。
新建築 1998年10月号に発表された作品です。
写真 右隣の建物は同じく篠原聡子先生の設計によるコルテ松波
通常なら北側廊下になるところを、その幅も南面に付加して、バルコニーを道路に面する南側にとっていて、そのバルコニースペースと玄関前を廊下が兼ねている珍しいプラン構成です。
そのため、玄関ドアがガラスで採光が取れるようになっています。
通りに面して大きくあけられたガラスドアは、居住者にとってあまりにも無防備なので、
その心もとなさを建築が受け止めて、さらに通りに対しての表情が、行き過ぎる人々にこころよく受け入れられれば、都市と建物の良好な関係の始まりとなるだろうと、計画されているそうです。
南側に取り付けられたアルミルーバーは、そのための装置として取り付けられているそうです。
ファサードに取り付けられたアルミルーバー
20×40mmはスライド式
篠原聡子先生は、日本の伝統的な建築のファサードの大切な構成要素であった格子や簾(すだれ)が、視線を適度に遮りながら、しかもあからさまに外部を拒絶しないやり方で、狭い路地にあっても、居住空間と通りをうまく調停したような、効果をここでは期待して設計しているそうです。
階段室と住居の玄関先
篠原聡子先生はこの建物の設計テーマとして、
閉じたワンルームの一人暮らし、そのきな臭い建物を端に眺めて通り過ぎる人の無関心という関係をどう調停できるか。
をあげています。
ファサード アルミルーバー ディテール
ルーバーは、バルコニーの手すりとなり、その上部は可動の建具となっています。
スライドする建具ルーバーは、生活のシーンによって開閉できるようになっています。
通常の建物では、コストや用途から固定式ルーバーが設けれれることが多いなかで、開閉式ルーバーは珍しいです。
ルーバーがスライドすることで、居住者にとって前面道路からのプライバシーと玄関ドアからの採光が選択的となります。
駐車場の附置義務を機械式駐車場を使用しないでクリアするために、南側通りの道路に面して駐車スペースが配置されています。
この建物の居室プランは、南側から、階段室→玄関不透明フィルム貼りガラスドア(前面道路に直角に面する配置)→バルコニー→透明ガラスドア→居室→キッチン→洗面・UB→北窓となっています。
なかなか取り入れられない珍しいプラン構成です。
南面西側端部 1階 階段室
前面道路と建物の間に駐車場をもうける構成は、ルーバーの奥にあるガラスドア玄関から道路までの距離を取るためにも、プライバシー確保のために有効となっています。
勉強になります。
宅配便の人が来て住人が受け取る様子や、玄関から住人の出入りの様子が、上階であっても道路からアクティビティとしてルーバー越しに気配が感じられます。
人の動作がファサードになっています。建物が都市に作用するように、人も建築に作用するようすがわかります。
プライバシー重視の潮流のなかで、都市に開いていこうとする篠原先生の挑戦が伝わってきます。
屋根:断熱露出アスファルト防水 シルバー塗り 田島ルーティング
外壁:コンクリート打放し補修 弾性吹付けタイル エスケー化研
開口部:アルミルーバー SD(井上工業)
アルミサッシ:新日軽
外構:アルミルーバーフェンス(井上工業)
内部・居室
床:セルフレベリング フローリング
玄関:長尺塩化ビニールシート張り(東リ)
壁:コンクリート打放し補修 PBt12.5 mm ビニールクロス(東リ)
一部100ミリ角磁器タイル(INAX)
天井:コンクリート打放し補修 PBt9.5 mm ビニールクロス(東リ)
洗面所、トイレ
床:置き床 べニアt12.5 mm 長尺塩化ビニールシート(東リ)
壁:コンクリート打放し補修 PBt12.5 mmビニールクロス(東リ)
天井::コンクリート打放し補修 PBt9.5 mm ビニールクロス(東リ)
特別仕様:ルーバー:アルミ角パイプ20×40@40~60 mm