住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
宮城県仙台市青葉区 ケヤキ並木の光のページェントで有名な定禅寺通りに面しているせんだいメディアテークです。
職員の方の許可を頂いた範囲で撮影させて頂きました。
設計は、伊東豊雄先生です。構造は佐々木睦郎先生です。
施工は、熊谷組・竹中工務店・安藤建設・橋本共同企業体です。
日経クロステックさん発表によりますと、せんだいメディアテークは『平成の10大建築の1位』とあります。異論のある人は少ないのではないでしょうか。
伊東豊雄先生のスケッチを佐々木睦郎先生がチューブとスチールハニカムパネルの構造で具現化した唯一無二の構造です。
もう誰も後を追えないくらい、すごい偉業です。
凄すぎて言葉がありません。
新建築 2001年3月号に発表されています。日本建築学会賞作品賞 グッドデザイン賞大賞などを受賞しています。
西面は、避難バルコニーで目隠しにファインデッキを250mmピッチで貼っています。
『メディアテーク』とは、公開コンペのとき、磯崎新審査委員長によって命名されたそうです。
テークとは『入れ物』『棚』であり、複雑に運動するメディアそのものを文字通り収納する箱を意味するそうです。
南側外観、全面ガラスダブルスキンのファサード越しにフロアを貫通するチューブがみえます。
内装
この建物では、床と天井という2枚の平面があって、壁や囲われた部屋が極端に少ないです。
部屋ごとというよりは、階ごとになっています。
同じ階の中での場所の性格づけは、建築の仕上げよりも、むしろ家具に多く依存しています。
床と天井の平面の連続性が重視されたデザインです。
天井は極力フトコロを小さくして、同じ面で連続することが、床は割付を強調しない段差なしの均質な面であることが重視されています。
必要な防火壁や遮音壁は、これらの面と、巾木や廻りフチなしでそのままぶつけられています。
一方で、外装のガラスやチューブとの取り合いディテールは、床と天井の仕上げは手前で中断して取り合わないおさまりとなっています。
建物を外から見たとき、ガラスへの映り込みもあわせて建物の外まで平面が連続しているような印象を生み、またチューブが床を貫通して連続していることを視覚化しています。
7階 東側のスタジオB
光を通し、音を遮り、かつ、曲線状に立てられているプロフィットガラスが使われています。
床:タイルカーペットt=7mm
OAフロア500角
軽量コンクリートt =70mm
スチールハニカムパネルt =400mm
CH3565
ワンルームの柵や間仕切りの無い一体の空間で、スタジオ利用の集団が、打合せをしている雰囲気を眺めることができてとても素敵です。
7階 チューブ6
これが建てものを支える柱です。柱の概念を超越しています。
7階 エレベーターホール
チューブのなかにシースルーエレベーターがあります。
シースルーエレベーターに乗り、チューブ内を分速105mで移動すると、各階の様子が次々に視界に飛び込んできます。
スラブが極端に薄いこと、仕上げや家具や照明手法を変えて、各階の印象がバラバラなこと、そして、何よりも空間が非中心的であることがその視覚的効果を倍増させています。
この階の家具は、ロス・ラブグローブによるデザインです。
5階 チューブ1
竪穴区画が無いのでチューブの中の機械が手摺がまわっているだけで露出しているのが見れます。
5階 東側と南側コーナー部分のディテール
天井:フサギst pl t=1.6mmウレタン塗装
軽量鉄骨天井下地t=38+19mm
PB t=9.5mm捨張+PB t=9.5mmVP
5階 東側シングルスキン 代用進入口まわりのディテール
床:松フローリングt=12mm 含侵塗料塗布
構造用合板t =9mm
OAフロア 角500mm重量タイプ
軽量コンクリートt =70mm
スチールハニカムパネルt =400mm
5階 南側室内から見たダブルスキン 代用進入口まわりのディテール
MPG金物 SUS径125 MPG支持金物
吊りロッドSUS径14mm
リブガラス支持金物SUS
リターンガラリW155mm
スチールグレーチング溶融亜鉛メッキ
I-38-5プレーンタイプカットエンド
クッション材アングル65×65×6mmウレタン塗装
5階 ホワイエ
CH3295
チューブ:遮熱ガラスt=15mm
柱径241.8mm、耐火塗料t=1.0mm
コンクリート止めst t3.2mm ウレタン塗装
フサギST PL t =1.6mm ウレタン塗装
硬質耐火被覆材t=15mmコテ仕上チューブ芯まで1000mm
1000mm以外はロックウール吹付t=30+5mm
5・6階ギャラリーの家具デザインはカリム・ラシッドです。
空調計画、床下空調
メディアテークでは、2・3・4・5階で床下空調が採用されています。
地下2階空調機械室から導かれた空調空気が東西端部中間に位置するチューブ6・7内の自立型交換ダクトと可視化された空調チャンバーを介して、2重床上の吹出口(径210)から緩やかな旋回流として放出される一般部の系統と、外周部に非旋回型の吹出口(径210)を持つぺりメーターの系統があります。
床下空調のアイディアは、コンペ当初から継続していたものだそうです。このことで、天井部をダクトや設備から自由にして、各階のワンルームの特性が活かされています。
コンペ段階では構造体であるプレート内をプレナム(内部圧力が大気圧よりも高い状態の空気が充満している空間のことをいいます。 )として使うことを目指したそうですが、チューブとプレートの接合部と、プレート自体の構造的な制約からかなり早い段階で構造床上のOAフロアをプレナム二重床として使用する方向に切り替えられたそうです。
また、OAフロアは歩行感を重視し、当初はセルフレベリング材を現場打設するタイプを検討していたそうですが、施工性の問題からパネルタイプで同等の歩行感を保つものに切り替えた経緯があるそうです。
中央列の東西に位置する二本のチューブ(6および9)から、二重床内の内法高約150mmの間を通って、サプライエアーが50m四方のワンルーム空間に均一に導かれています。
チューブ内の空調チャンバーから平均10m/s以上の風速で二重床に向かって放出される方式で、サプライエアーの消音についても検討されているそうです。
3階 図書館 チューブ8
内部は吹き抜けているため、その表面がガラスですが、層間区画となっています。
コスト上の理由から、不透明な区画壁や水平区画を用いた部分もありますが、チューブ表面積の54%にあたる3800㎡にガラスを用い、透明な区画壁を実現させているそうです。
照明は、面出薫によるデザインです。
3階 図書館からシースルーエレベーター チューブ2・3を通して、上下階をみることができます。
3階 ライブラリー CH5100
長尺カーペットt =10mm
OAフロア 角500mm
軽量コンクリートt=70mm
スチールハニカムパネルt=400mm
赤いベンチをはじめ、この階の家具は、手塚義明+小池ひろの(ケイ・ティアーキテクチュア)のデザインです。
2階 ライブラリー
ガラス
スラブ間距離は、積載荷重満載時の地震により、最大34mm変動を予測しているそうです。
変異は、各階のスラブ上の方立ファスナー部分で吸収し、ダブルスキンの外側ガラス面においては、目地シールの変形で吸収させているそうです。
建築基準法38条(旧)大臣認定
鉄骨であるチューブやプレートをできるだけ素地のまま維持したいということと、チューブによって形成される竪穴区画を透明なガラスで区画したいというふたつの要求を満たすために、せんだいメディアテークは、1997年日本建築センターの防災性能評定を得て、建築基準法38条(旧)による大臣認定を取得しているそうです。
耐火設計 区画設計
防災計画の条件として、什器備品などの可燃物を全てカウントし、火災性状予測がおこなわれています。それにより、各階での必要耐火時間が導かれてます。
火災性状予測は、ギャラリー階などのぼや程度の火災から、ライブラリー階の60分の盛期火災まで数段階そろっています。これは、該当階の位置により自動的に耐火時間が決定されてくる基準法の方法とは違います。
チューブやプレートをできるだけ無被覆または耐火塗料による被覆で、耐火設計をクリアしようとしています。
この耐火被覆の考え方には、チューブの周りをさらに遮熱ガラスなどで覆っていることがプラス方向に寄与しているそうです。
当時は、基準法の性能規定への移行や、耐火塗料の一般認定に先行した時期での設計なので、とても珍しい方法です。
場所に応じてFR鋼無被覆/FR鋼耐火被覆/FR鋼法定耐火被覆の仕様が用いられています。
区画設計では、チューブの竪穴空間は、当時国内で前例のほとんどなかった遮熱ガラスや、耐火材としてシリコンを使ったサッシなどを用いて、耐火試験炉でモックアップ実験を行いながら性能を確認していったそうです。
網入りガラス/耐熱強化ガラス/遮熱ガラスの3種類のガラスと耐火サッシの組み合わせが用いられています。
言葉で説明するのは簡単ですが、構造設計だけでなく、耐火設計一つとっても、防災設計専門家による外注設計無しでは、誰もこの設計手法を挑戦しようとすら思わないくらい最高難易度の設計です。
2階 ライブラリー 奥のオーガンジー布で仕切られた部分は、図書館(児童書)です。
同じ素材を同じ方法で徹底して反復させた床と天井を作ることで、チューブのランダムな存在が逆に浮かび上がります。
右手はオフィス、ベンチ、雑誌棚などの家具は、妹島和世デザインです。
1階 エスカレーター折り返しフロア
1階 オープンスクエア 受付カウンター方向を見る。
大理石600*600mm t=20mm 貼付モルタルt=45mm CH6780
コンクリートスラブ t=150ミリ
1階の家具デザインは、カリム・ラシッドです。
東側外観 撮影時近隣が解体されて空地だった為、正面が撮れました。
部屋ごとではなく、階ごとに内装がわかれています。
地下1階駐車場のチューブ
南側ファサード東1階端部
外壁の総面積約6300㎡のうち73%にガラスが使われているそうです。
ガラスでない部分は、防災計画上耐火壁とせざるを得なかった西面の2階から7階、そして直射日光を嫌う3・4階図書館の東・北面と使い分けられています。
構造計画 佐々木睦郎先生
新建築に寄稿された『せんだい奇跡のコラボレーション』のなかで、構造設計の佐々木睦郎先生は、
非情な確信犯としてのぞんだことはではあったが、工事関係者全員の熱意と現場の苦労を目の辺りにして内心は胸が押しつぶされる思いであった。
当時、すでに構造設計者として高名であった佐々木睦郎先生が、先を見通せない不安と重圧をかかえて、さらに高みへと挑戦して前進していく姿に感銘をうけました。
1階 南ファサード外観西側
せんだいメディアテーク
所在地: 〒980-0821 宮城県仙台市青葉区春日町2−1 1F
電話番号: 022-713-3171
各フロア利用時間案内
7階
スタジオ
受付相談カウンター
施設利用申込・相談
9時から22時
9時から21時
6階
5階
ギャラリー
※終了時間は催事ごとに異なります。
※木曜日は準備日につき5・6階には入れません。
7階
4階
3階
ライブラリー
市民図書館
※閉館時の図書資料・雑誌の返却は1階駐輪場脇返却ポストへ
9時半から20時
(土日祝日は18時)
2階
ライブラリー
映像音響ライブラリー
館内視聴・資料貸出・返却・利用登録
録音図書・字幕入り資料の貸出
目や耳の不自由な方の相談カウンター
情報閲覧支援
児童書・雑誌(市民図書館)
※静養室、授乳室は開館中いつでもご利用になれます。
お近くのカウンタースタッフにお声掛けください。
9時半から20時
(土日祝日18時)
1階
プラザ
カフェ
※ラストオーダー最終注文
ショップ
9時から22時
10時から21時30分
21時
10時から20時
地下1階
駐車場(入庫は21時30分まで
※1時間まで200円
2時間まで400円
その後、30分毎150円
9時から22時15分
上記は、2024/3/19の情報です。詳しくはせんだいメディアテークのホームページをご覧ください。