住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
山形県山形市にありますシェルターインクルーシブプレイス コパル(山形市南部児童遊戯施設)です。
シェルターインクルーシブプレイス コパルさんの許可を頂いて2022年8月に撮影させて頂きました。
設計は、大西麻貴先生+百田有希先生/o+hです。
この建物は、PFI方式で運営されています。
PFI方式とは、公共事業を実施するための手法の一つです。
株式会社夢の公園(代表企業・建設株式会社シェルター 設計・監理株式会社オープラスエイチ 建設株式会社高木:株式会社Otias:石川建設産業株式会社:株式会社タカハシ電工 維持管理太平ビルサービス株式会社山形支店:ALSOK山形株式会社 運営合同会社ヴォーチェ:特定非営利活動法人 生涯スポーツ振興会(アプルス))
という10社が出資した会社が、設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法です。
施工も担当されたシェルターさんは、耐火木造で有名な山形県の会社です。
2023年日本建築学会作品賞を受賞されています。
関係者の皆様 おめでとうございます。
新建築 2022年7月号 GA JAPAN 177 日経アーキテクチュア 2022年8月25日号に作品が発表されています。
2階スロープからエントランスホールの眺め
平面的には、3次元曲面の屋根・天井下地は鉄骨造平面トラスで体育館と大型遊戯場をつなぐ鉄筋コンクリート造の共用部・スロープ2階部分が中心部に配置されています。
断面的には、屋根鉄骨平面トラスと鉄筋コンクリート造が近づくところにブレースが配置されて、屋根の水平力を鉄筋コンクリート造部分に伝えています。
この鉄筋コンクリート造のスロープがバランス良く配置されることで、その他の鉄骨ブレースが最小限に抑えられているそうです。
体育館からエントランス方向の西側の眺めには、朝日連峰 飯豊山 白鷹山地域がひろがります。
山形市は東西に山に囲まれた盆地です。
東側の有名な蔵王連峰の他にも、田園の先の山並みが眺められます。
山形の地形に配慮した東西に開放された窓をもつ配置が素晴らしいです。
無柱空間となる大スパンはカラマツ集成材のアーチ梁で最大スパンは25mです。
そのまわりは3次元曲面の鉄骨平面トラスでかこまれています。
体育館 東側の窓
外壁の外にある鉄骨柱と平面トラス屋根の接合部は、鋼管をもちいたノンダイヤ形式の剛接合となっていて、梁の連続性が確保されることで、梁上での自由な柱配置を可能にしているそうです。
大型遊戯場 スロープ上から見下ろし
窓の外には雨の時に『コパルの滝』ができる『みずのひろば』がみえます。
大型遊戯場
天井の集成材アーチは最大スパン19mで木造部分です。
子供たちが遊ぶスロープの勾配は1/12~1/40でさまざまな子供たちが遊べるようになっています。
天井仕上:細木繊維化粧板t14mm
大型遊戯場のスロープにかこまれたくぼみの上にネット小屋がかけられています。
床:合板t12+12の上クッションマットt50mm リノリウムt2.5mm 遊具部シナ合板t4mm
天井:PB9.5の上クロス貼り
エントランスホールから図書コーナーの眺め
写真左の外の景色はゆめのひろば、右手は体育館です。
エントランス
3本あるスロープの一つとなる西側スロープが屋根へのびていきます。
屋根とコンクリート壁が近くなった部分にブレースが配置されています。その他のブレースが最小限におさえられて周辺環境への眺望が確保されているそうです。
ゆめのひろばには、食育カフェ『little JAM』入口があります。
食育カフェ『little JAM』の店内
片岡もおいしい飲みものを頂きました。
体育館
床レベルが-900に下げられていています。
蔵王連峰が窓の外に広がります。
屋根:鉄骨平面トラス アスファルトシングルt2.8mm 改質アスファルト防水
軒天井:木下地 珪酸カルシウム板t6mm+6mm AEP塗装(ローラーリシン)
幕板:杉板目透かし貼り
かぜのひろば
屋上にのぼるスロープと緑化があります。
鉄骨トラス屋根と大スパン木造屋根の上を屋上緑化しているのではありません。
屋根全体の水平力を負担して、閉じる必要がある部屋を鉄筋コンクリート造としています。
鉄筋コンクリート造の屋上を緑化して、そこまでの勾配をGLから盛土してつなげているとても合理性の高い計画です。
片岡は見学しているとき、屋根の上を緑化していると勘違いしていました。
そう思わせるほど秀逸な構成にあとで驚きました。
日本建築学会賞を受賞する設計はやはり違います。
すごいです。
シェルターインクルーシブプレイス コパル(山形市南部児童遊戯施設)
2023年6月10日現在の情報です。最新情報はコパルさんのWEBサイトをご覧ください。
2022年8月見学当時は、コロナ禍ということもあり、平日でも大人気の施設で事前予約+時間交代制でした。
入場ご希望の方はご注意ください。
住所:山形県山形市片谷地580−1
施設案内
利用料 無料
利用時間:屋内施設:9:00~18:00
屋外施設:9:00~18:00
(10~3月は16:00まで)
休館日:毎月第2・4火曜日(祝日の場合は翌日) 1月1日
来館予約が必要です。