住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。宮城県仙台市にあるテナントビルです。
日本初の製材による純木造7階建て事務所ビルです。
このビルの事例知見から全国各地で調達可能な木製材と技術がオープン化されている「木質耐火部材」の組み合わせにより中大規模木造建築のモデルケースとなっています。
高層建築であっても鉄骨造や鉄筋コンクリート造でなく木造を選ぶことができる時代がきたことを具現化した日本建築史に残る画期的な事例です。
素晴らしいです。
設計はシェルターさんの設計施工です。新建築2021年5月号に発表されました。
外観のみの撮影です。
地域に対しての貢献ということを設計のコンセプトとしています。
日本初の製材による純木造7階建て事務所ビルとして、準防火地域 商業地域の仙台駅東口正面に建っています。
1時間耐火・2時間耐火仕様の木質耐火部材「COOL WOOD」により厳しい耐火基準をクリアしています。ちなみにシェルターさんには3時間耐火仕様もあります。
荷重支持部には一般に流通している地産のJAS製材を100%使用しています。
木質耐火部材「COOL WOOD」の特徴
柱としては芯部の荷重を支える荷重支持部、その外皮側にあるのが耐火構造の被覆層があります。
その中間部には石膏ボード2時間耐火では石膏ボードは21㎜厚の3枚貼り(燃え止まり層)そしてその外に木層(表面材)が見えがかり面としてあります。
この3層全てを含めて大臣認定となっています。
この表面材の木は、意匠だけではなく耐火性機能上この木層部分は20㎜あり、この20mmの木層で耐火試験で20~25分の石膏ボードに熱が到達するまでに遅らせる機能があります。
つまり表面の木も耐火性能上意義のあるものとなっています。
結果的には荷重支持部材が損傷しない炭化しないように性能を持ち合わせた2時間耐火構造のCOOL WOODという柱材になります。
オフィスビルを作ろうとすると柱1つとりましてもこれだけ大きな柱断面が必要となります。(耐火被覆を除いた芯の構造材の1辺が)450㎜程あります。
一般的に集成材はLVLを使うことが多いと思います。
集合住宅やホテルのような小部屋がいくつもある間取りのプランであれば、耐力壁が取りやすいのでLVLを利用した壁構造が自然ですが、オフィスでは無柱空間が要求されるので線材の柱を用いた構造形式が必要になります。
LVLとは
約4㎜の厚さに加工した材料を含水率8%にまで乾燥させて積層・圧着してつくる建材です。
木材の乾燥による収縮、反り、割れ等の変化が起きない建材です。
この建物では地域貢献として地元の建材を使う事をポイントとしています。
この地域には大きい集成材を作るところが近くにありませんでした。
地元調達として宮城県スギ材製材を用いています。450mmという大断面角材は製材にはあまりないので小さい150mm角の柱を9本並べて450mm角としています。
束ね柱(複合圧縮材)の大型特殊加工機で接合部を加工しています。
高惣木工ビルの防耐火要件
1~3階までは2時間耐火構造、4~7階(4層)が1時間耐火構造、最上階から5~7層は特に柱・梁・床については2時間の耐火性が必要になります。
構造は外周部とエレベーター・階段コアの耐力壁に設けられています。
収益部はなるべくブレースを設けないようにする必要があります。
敷地の状況から西側道路側が開けたところに開口部として、中央部のハの字ブレースに集約されています。
外壁 一時間耐火
大臣認定FP060BE-0164(2)
外側:ALC パワーボードル アクリルタイル塗装
GB-F(V)WRt21防カビタイプ
通気胴縁21*45・90
防湿防水シートt0.17
構造用合板t9
間柱 45*120@455(1~3F)@303(4~7F)
室内側:本漆喰塗
GB-F(V)t21+21
断熱材グラスウール24K t105防湿層付き
仕上の壁天井のビニールクロス貼りはテナント工事 床もテナント工事なのでモルタル金鏝仕上げのままです。
床 二時間耐火/(2~4F)
大臣認定FP120KL-0150(1) (2)
表側 タイルカーペット(2~4F)
フリーアクセスフロア
GB-F(V)t21+21+15
構造用合板t24
小梁 105*180@910
裏側 GB-F(V)t21+21+21
断熱材グラスウール32K t120
GB-R t12.5(二重天井1~4F)
床 一時間耐火/(5~7F)
平12建告第1399号(平30改正国交告第472号)
表側 タイルカーペット(5・6F)
フリーアクセスフロア
GB-F(V)t21+21
構造用合板t24
小梁 105*180@910
裏側 GB-F(V)t25+21
断熱材 グラスウール32K t120
GB-R t12.5(二重天井5F)
柱
二時間耐火 製材/cool wood
2時間耐火構造/大臣認定 GB-F(V)t21+21+21表面材/製材t20
一時間耐火 製材/cool wood
1時間耐火構造/大臣認定 GB-F(V)t21+21 表面材/製材t20
屋根
傾斜屋根 ガルバリウム鋼板t0.35立平葺き3/10勾配
陸屋根部 露出アスファルト防水1/50勾配
屋外避難階段は鉄骨造
高惣木工ビルはテナントオフィスビルの収益物件です。
実利用する面積を多く確保するために建物内部にできるだけブレースを配置しないプランとなっています。
追伸 2022年11月9日
銀行融資に関する記述を削除させて頂きました。
訂正と謝罪をさせて頂きます。
片岡の勉強不足からご不快な記述となりましたことをお詫び申し上げます。誠に申し訳ございません。
高惣木工ビル
〒983-0852 宮城県仙台市宮城野区榴岡2丁目5−5