住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
茨城県日立市にあります日立市庁舎です。
外観のみの撮影です。新建築2019年5月号に発表されています。
設計は、妹島和世先生+西沢立衛先生/SANAAです。
妹島和世先生は、日立市ご出身の偉大な建築家です。
立身出世して故郷へ帰る。錦を着て故郷へ帰る思いではないでしょうか。
建築家冥利につきるうらやましい仕事です。
左から執務棟 屋内広場屋根 屋外広場屋根の構成
シンプルできれいなディテールです。
同じ免振層の上にあるとはいえ、変位は異なるわけですので、執務棟と屋内広場局面屋根の長手方向57m接合部がこの建物最大の難所ではないでしょうか。
執務棟のカーテンウォール芯と執務棟を支える鉄骨梁芯と長手方向57mという長大な曲面屋根の呑込み代の干渉の設計がとても難易度が高いと思います。
しかし、免振層の上のジョイントなので変位量はとても少ないのだと思います。
屋外広場は免振層上にないので、屋内広場の軒を大きく出してエキスパンションジョイントを超えて離れています。
執務棟室内広場 屋根
谷樋からの竪樋が柱に沿わせて内部に見えます。
特殊かん合式平葺き@400 カラーガルバリウム鋼板t0.4 (発泡ポリエチレンt4裏貼り)
バックアップ材 発泡ポリスチレン板t60
アスファルトルーフィング940mm
木毛セメント板t40
C100*50*20*2.3@606
多目的ホール棟 多目的ホール南面
床
透水性コンクリート舗装t150
カッター目地
砕石t150
大屋根から国道6号方向の眺め
多目的ホール棟
平屋なので免振構造ではないため、床にエキスパンションジョイント納まりはありません。
屋外広場の屋根の中にある多目的ホール棟は別建物として屋根の縁が切れています。
屋外広場の屋根と多目的ホール棟では剛性率、偏心率が異なるためだと思います。
デザイン的にはボールト状の曲線屋根をガラスを貫通させて大屋根と連続させたいところですが、施主要望の堅実な構成としているのだと思います。
日本に8人しかいない建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞受賞建築家としての自分の設計信条を捨ててでも、故郷の日立市民のためにメンテナンス性の良い長持ちする建物を作ろうとする妹島先生の強い献身と愛を感じます。
屋内広場屋根と会計課欄間部分
局面屋根を勝たせて軒を作る納まりに施主要望による質実剛健さを感じます。
万が一 谷樋で雨漏り事故が起きても、下には執務スペースが無い堅実なプラン構成となっています。
屋内広場南側外壁 会計課 床エキスパンション納まり
屋内広場 執務棟 東面:ガラスカーテンウォール 北面:押出成形セメント板
執務棟妻面の押出成形セメント板と屋内広場の押出成形セメント板はサイズも仕上も違います。
ガラスカーテンウォールモジュールと合わせてあるのですが、既成サイズより大きいと思います。特注でしょうか。
写真中央左手とアスファルト部の境目があるのは、この建物が免振建物なのでエキスパンション部分となっています。
執務棟 屋内広場
2層吹き抜け空間となっています。
写真左手のエントランス コンビニなどの1層建屋の天井があります。
屋内広場
柱 st径406.4t21.4セラミック系耐火被覆材t25+AEP塗装
執務棟
外壁:押出成形セメント板 アルミサッシ
屋上:シート防水 断熱材t50 木毛セメント板t18 C100*50*20*2.3@606
執務棟妻面の外壁 押出成形セメント板は既製品サイズで素地仕上のようです。
左から執務棟 屋内広場 屋外広場
執務棟と屋内広場 一期工事
屋外広場 二期工事
と別れているそうです。
中庭から屋外広場・執務棟の眺め
南側屋外広場 交通広場
柱
st 径457.2 t19 厚膜型ポリシロキサン塗装
屋外広場 交通広場
屋外広場 屋根高さ 最高8000mm 最低2273mm
ボールト状に曲線屋根なので高さの変化があり、すばらしいです。
屋外広場屋根
リブ:@600t12h150 厚膜型ポリシロキサン塗装
表面・天井:st PL t6 厚膜型ポリシロキサン塗装
谷部:吹付塗膜防水
エントランス広場
屋外広場屋根先端納まり
柱 径508 t22 フッ素樹脂塗装
北側 手前から屋外広場 多目的ホール棟 執務棟
屋外広場 東面と屋外広場
屋内広場エントランスから屋外広場
屋外広場 エントランス付近
妹島先生は日立市出身の偉大な建築家なので、てっきり特命受注かと思いましたが、コンペによる受注だそうです。
日立市役所
所在地: 〒317-8601 茨城県日立市助川町1丁目1−1
電話: 0294-22-3111
日立市公式ホームページ:https://www.city.hitachi.lg.jp/