住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
鬼石(おにし)多目的ホール は、群馬県藤岡市鬼石に立地する多目的ホールで、妹島和世先生による設計です。曲面ガラスが多用され外壁全周がガラス壁なので、壁から壁へ視線が通り抜け続け、街並みまで連続しています。壁がガラスであることによる不思議な感覚の体験ができる建物でした。
2006年には日本建設業連合会の第47回BCS賞を受賞。 2005年5月号に新建築で発表されています。
南側 芝生広場からホール2ホワイエ外観
背面の近くに山並みが見えます。
ホール2とホワイエを南側芝生広場から眺める
ホール1がホール2を通して後ろに見えます。
高低差のある敷地 東側道路よりの眺め
建物の屋根は低く抑えらていて、平屋のような平易な建物のような印象を受けますが、敷地は山間部にあり、現地も山から神流川にづづく斜面にあることがわかります。山間部としては緩やかではありますが、階高一層分に相当するような結構な敷地高低差があるようです。その高低差をうまく利用して天井高さの必要な体育館や舞台・集会用可動式観客席171席のあるホールが納められていて秀逸な設計が大変勉強になります。
ホール2舞台スロープから 南東からの眺め
右手は町役場へと続く芝生の東庭があります。左手はホール2の舞台・観客席に続くスロープで地下にもぐるようになっています。
芝生広場より管理棟とホール2を眺める
町役場へと続く東庭の先は傾斜でさがっています。
ホール2(右手)とホール1(左手)の間の通路
外部から外部へ建物の間を縫って街の中を通り抜けるように行き来が出来ます。とても楽しい迷路のような空間です。隣接する小学校と町役場の間にこの建物はあるので、通り抜ける散歩道のように利用することが出来るかもしれません。
山あいの小さな町のメイン通りに近い場所だと思うので、そんな中心街で、ワクワクするような散歩道を体験で来ると思います。
ホール1 体育館の天井
見上げると天井が連続してトレーニングスペースに続く部分があることがわかります。
天井梁は地元産の鬼石杉が用いられているそうです。
ホール1 体育館 からホール2ホワイエへの眺め
見上げた天井がガラス壁で視線が連続するので雲のようにとなりのホール1の屋根が眺められます。素晴らしい空間体験です。勉強になります。
ホール1 体育館から管理棟とホール2を眺める
体育館の高さ約半分が地下に埋められたように見え、自然と視線が明るい屋根側に向かいます。連続したガラス壁の開放感が素晴らしいです。
ホール1 体育館 南東からの眺め
地下への階段室から出たところからの眺めです。
地下に降りるとき一階閉塞空間になりそこから天井が開けた大空間になります。
ホール1北側階段から管理棟への眺め
1階の外周部が地階の体育館を眺める観客席のようになっています。外部への解放感と連続館が素晴らしいです。
細い鉄骨柱とガラスサッシ方立が同じようなサイズなのでガラスや柱が無いような錯覚さえ感じます。凄いです。鉄骨に耐火被覆が不要だからといって、屋根荷重が軽いからといって、体育館のスパンはとんでいるのに、柱がここまで凄い表現ができることに感心してしまいます。
西側ホール2ホワイエからホール1(左手)南庭の眺め
ホール2のホワイエのくびれを進むとホール2の舞台観覧席になります。
迷路のようですが、壁がガラスなので街との関係がわかりやすく方向感覚を失いにくいという事が体験できました。
外周がすべてガラス壁なので、となりの棟のホール1までの位置関係が簡単に把握できます。
南庭とホール2ホワイエ
芝生の南庭とホール2ホワイエの出入り口です。よく見ますと、外壁ガラス面と地面のレベル差に、止水上の立ち上がりの段差がほとんどありません。
出来口部分のスチールサッシのディテールは、 欄間FIXで分割され、障子が框ドアになっていました。
ホール2からホワイエ ホール1体育館への眺め
南の芝生庭とホールと東側の庭の床の連続性が凄いです。
東庭とホール2スロープ
スロープは、ホール2の舞台・観客席に降りるための部分です。スロープの面積は観客席+舞台の面積の1/4を占めるので、地下掘削工事費なども考慮すると、できるだけコンパクトにしたくなると思います。
私でしたら、スロープと外壁の間が、誰も通らない無駄なスペースになるので、曲線ガラスで作ることに躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。
そこをコンセプト通り曲線でゆったりとした空間を取る設計思想を貫けることに妹島先生の凄み(すごみ)を感じます。なかなかできることではないのではないでしょうか。
ホール2舞台と観客席
可動式の観客席171席が右手に収納されています。
ホール2地上部分から観客席と舞台を眺める
観客席と舞台が地下フロアに沈められています。外周部にカーテンがあり暗転できるようになっているようです。
ホール2 スロープと観客性の関係
観客席の面積とスロープの面積比が約4:1のようです。
観客席と舞台 ホール2
天井の地元鬼石産杉が用いられているようです。
ホール2から管理棟とホール1を眺める
それぞれの棟の間にある通路が建物の間にあることで敷地内を通り抜けられるようになっています。
ホール2からホワイエと通路をはさんだホール1を眺める
左から東庭の外部・ホール2・外部通路・ホール1と4つの場面がガラスで透過して見えます。
目立ちませんが、水平力を負担していると思われるブレースが何か所かあります。
ホール2からホール2を眺める
建物内部から自分のいる建物の外観を眺めることができます。
屋根の木パネルの目地部から雨染みが多数出来ていました。どうしても屋根を軽く薄く見せるため、屋根勾配とパラペット部立ち上がりが低く抑えられてしまい、オーバーフローした雨水が天井に回ってしまうのではと思われました。また、屋根防水立ち上がり面も曲線の連続なので雨仕舞が難しくなるのではと思われました。
鬼石多目的ホール
下記の情報は2019年11月25日に収集した情報です。
最新の情報は藤岡市のホームページをご覧ください。
住所:〒370-1492 群馬県藤岡市鬼石158番地
TEL&FAX:0274-20-3011
休館日:年末年始(12月28日から1月4日まで)、月曜日(ただし、月曜日が祝日の場合は開館し、翌日が休館日)
見学時間:9時から17時まで