住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。栃木県那須郡那珂川町にあります隈研吾先生による設計の那珂川町馬頭広重美術館を見学してきました。職員の方の許可を頂き外観と展示室以外にあるエントランス部の内部撮影をさせて頂きました。新建築 2000年11月号に発表された作品です。村野藤吾賞 日本建築学会作品選奨などを受賞されています。美術館にはカフェが併設されています。
屋根ルーバーのグラデーション
駐車場からの建物全体です。配置は、背後の山に向かって少し上がったところに、桁行方向が長い平屋となっています。
外部歩道 縦ルーバーと屋根ルーバー
現在弊社事務所で設計中の賃貸マンションの1棟フルリノベーション設計でルーバーデザインの表現を検討しています。水平ルーバーと垂直ルーバーが交わる表現がどうなるのか気になっていました。 屋根ルーバーがかなり寝た軒先と縦ルーバーは調和していると思いました。参考になります。 縦ルーバーのピッチがあらく、ルーバーの見込みも浅いですが、視覚的にルーバーとして認識できるものなのだとわかりました。勉強になります。
外部歩道から軒先の見上げ
鉄骨造梁から吊りボルトで木ルーバーがスチール製下地を介して吊られています。軒先が低くなっていて素晴らしいのですが、このエントランス部分で吊りボルトが見えていました。波板ガラス屋根はただ光を通すだけで存在感を消しているようです。 波板ガラスを用いた庇の設計をしたことがありますが。金属板葺きのように嵌合部があるわけではなく、シール押さえで重ね葺きされているディテールになるので、屋根面に使用するには変位によるシール切れなどを考慮する必要があるので、それを無視して屋根下に居室があるような屋根面に波板ガラスを使うには勇気がいるように思います。不具合は起きないのでしょうか。構面にブレースがあるので変位を考慮する必要がないのでしょうか。何か工夫があるのかもしれません。
ルーバー建築
光を通して透けている軒天ルーバーとガラス壁面から大きく浮いている壁ルーバーが素晴らしいです。ルーバーが宙に浮いているように透けているのが、美しいルーバーの表現なのだと思いました。勉強になります。
軒下から室内天井へ連続したルーバー
この木材は杉材で、不燃処理、防腐処理をほどこす事によって屋根材としても用いる事が可能となっているようです。大切な美術品を保管する美術館で、屋根に本来可燃材である木を使う勇気がすごいと思います。平屋の屋根なので30分耐火かと思われます。30*60ミリでは燃えしろ設計仕様も不可能ではないかと思うほど細い材料だと思いました。大臣認定を取ったのかもしれません。 私はマンションの設計機会が多いので、鉄筋コンクリート造の耐火建築物の既成概念があるせいか、いくら不燃処理をされていても裸の木をこれほど全面に使用する勇気はまだありません。しかし、日本は政策として木材を使うことを推進しているので、このような思想を身につけないといけないと思いました。勉強になります。
カフェ側妻面
ルーバーの材料が想像していたより細い材料でした。ピッチももっと細かいのかと思いました。材は30*60ミリ、ピッチは120ミリのようです。
ルーバーとガラス面
壁面ルーバーとガラス面は大きく離れていました。普通、ガラス面から近いところでルーバーをつけるように思いますが、これだけ離すととてもきれいだということがわかりました。材が細くピッチが材の見付面より相当広くても見ごたえがあると思いました。勉強になります。
ルーバー軒先
屋根ルーバーと軒天ルーバーの間に鉄骨屋根構面として桁行と垂木が同一平面にありルーバー下地のストリンガーが構面の上にあり、見つけ面がダブルにみえます。
壁面縦ルーバー 桁行と垂木 屋根ルーバー
縦ルーバーとガラス面が外壁にあります。桁行の鉄骨が縦ルーバーが屋根面までのびることで隠されています。勉強になります。
庭とルーバー
庭とガラス面と木ルーバーのコントラストが美しいです。
庭側外部舗道
石床は地元産だそうです。石床と竹と木ルーバーの構成が美しいです。
アプローチ
同じ木ルーバーでも屋根ルーバーと軒天ルーバーでは光のあたり方のせいか色が変かわって見えることがわかります。
アプローチ ディテール
鉄骨垂木と桁行が軒天ルーバーが途中で終わっているので見えます。波板ガラスと壁ルーバー下地も見えてディテールの勉強になります。
軒先
木ルーバーに細い材を使用していて、ルーバーのピッチを拘束するスチール製のロッドも軒先からかなりセットバックしています。下地のストリンガーはさらにセットバックしています。しかし、変形やあばれが目立ちません。すごいです。非常に美しい軒先です。
軒先ディテール
垂木先端のウェブがカットされて上側フランジだけになっています。
エントランス
ガラス自動ドアの上側にあるべき駆動部分がありません。すごいです。
自動ドアが閉じた状態
室内側の床石がボルト留めになっていて、点検口になっていました。上を歩くと中が空洞なのが歩行感でわかります。下枠側に駆動部があるようです。
自動ドアが開いた状態
下枠がスリットになっていて結構空いていて深いです。勉強になります。
風除室内側のガラス自動ドア
とても透明な自動ドアです。かっこいいです。
エントランスホール
軒天ルーバーの光の透ける部分と天井のルーバーの光が透けない部分があります。天井の一部にトップライトになっている部分のルーバーが透けている部分があります。
エントランスホールのルーバーと外部舗道軒天ルーバー
光で透けるルーバーと黒塗装天井下地のルーバーの対比が勉強になります。
展示通路
和紙の壁とルーバーの壁があります。天井ルーバーと壁ルーバーは色見が違います。和紙を巻いたルーバーのようです。
展示室入口からの展示通路
木ルーバーとサスペンドガラスのスクリーン壁で構成された風除室の光のコントロールがすばらしく美しいです。勉強になります。
オープンギャラリーと庭
ルーバーの壁も和紙の壁も足元が浮かした表現になっています。支持材の割付が難しいです。
エントランスホール
ミュージアムショップがあります。
所在地
- 〒324-0613 栃木県那須郡那珂川町馬頭116-9
- 電話番号:0287-92-1199
- FAX番号:0287-92-7177
- E-mail:hpmaster@hiroshige.bato.tochigi.jp
開館時間
9:30〜17:00(入館16:30まで)
休館日
- 毎週月曜日(月曜が祝日の場合は火曜日)
- 祝日の翌日(ただし土・日曜日は開館)
- 展示替え期間(お問い合わせ下さい)
- 館内燻蒸作業期間
- 年末年始
入館料金
企画展 特別展
企画展 | 特別展 | |
一般 | 500円 | 随時料金設定 |
大高生 | 300円 | 随時料金設定 |
※団体割引(1割引)は20名より。 ※障害者手帳等をお持ちの方および付き添いの方1名は半額。 ※中学生以下の方は無料。随時料金設定 2018/8/26現在の情報です。詳しくは公式ホームページをご確認ください。