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住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。 群馬県太田市にあります香山壽夫先生による設計の太田市民会館を見学してきました。職員の方の許可を頂き外観とロビー・多目的室を撮影させて頂きました。残念ながら音楽ホールは利用中で拝見できませんでした。新建築 2017年9月号に発表された作品です。
ラウンジの壁と天井がとても綺麗なワイン色です。
ホワイエから先は利用中で入ることができませんでした。音楽ホールとホワイエの間が縁切られトップライトがあるようです。
レンガ透かし積の壁部分が多目的室でレンガ壁とガラスサッシのダブルスキンで防音となっているようです。写真右手のスタジオ外壁はコンクリート打ちっ放しで杉板本実仕様でしょうか、木目がきれいに転写されています。
ガラスの継ぎ目横ラインとブロックの天端がそろっていませんでした。何か理由があるのだと思いますが、わかりませんでした。
外壁の面と内壁の面がガラスカーテンウォール面にステンレス見切りをつけて段差を取り合わせているディテールとなっていて、躯体面は同じ面になっています。躯体を盗んで面をそろえない方法で設計しているようです。また、床がコンクリート磨き仕上げでスタジオの壁のコンクリート打ちっ放しとコントラストがあまりない構成となっていて勉強になります。 話は変わりますが、ネットの東京新聞の記事を見ました。竣工時この床にひび割れが起きて瑕疵として補修を行ったようです。コンクリート鏡面仕上げとして当初は目地がなかったそうですが、私が見学した際は、カッター目地が入っていました。建設業にたずさわる人であればご存知の方も多いと思いますが、コンクリート金コテ仕上げはひび割れが起こるのが前提といってもいい仕様です。誘発目地が優先されますが、その目地と直行方向に乾燥収縮が進むわけではないので必ず誘発目地部でひび割れが起こるとは限りません。 最近、片岡が見学した建物では、コンクリートまたはモルタル金コテ仕上げとして同様の仕様で床を仕上げた公共の建物として新潟県の秋葉区文化会館 東京都小平市のなかまちテラスがあります。なかまちテラスは相当ひび割れが進行していました。
私もマンションの設計で屋外廊下、屋外避難階段や上階のエレベーターホールで床仕上げにモルタル金コテ仕上げを行ったことがあります。私の場合はお施主様に『必ずひび割れが起きます。しかし、見た目のひび割れで構造上の有害なひび割れではありません。長尺シートなどで覆いかくすこともできますが、私はひび割れたモルタル金コテ仕上げが見た目が悪いとは考えていませんので予算の都合もありますので、このままモルタル金コテ仕上げとして設計させてください。』とお施主様に申し出ています。 個人オーナー様の場合などは、打ち合わせで話合える環境があり、ご納得頂ければ可能ですが、公共建築工事では、お施主様である市民全員に説明する機会もなく、市民全員の了承を得たわけでもないので、このような事件が起こるのだと思います。なんでもツルツル・ピカピカで節(フシ)やあばたやヒビ割れを許さない自然の物理を許容しない仕上げが最良の仕上げという思想は私は持ちません。私は違う建築教育を受けてきています。 例えば、フローリングでも、節(フシ)のある自然木のフローリングよりも、合板の上に木目を印刷プリントした偽物のほうが、色も良く節(フシ)もないので木目がきれいだという認識が一般に広がっています。私の先生である東京芸術大学教授の北川原先生はひび割れは自然で美しいとお考えで自邸と事務所の床は目地無しのコンクリート金コテ仕上げとしています。床暖も内蔵されているので温度収縮も激しくたくさんひび割れています。ツルツル・ピカピカが最良とする風潮は、最大公約数的なつまらないデザインへと誘導され、量産住宅や公共建築などで蔓延するよくある原因だと思います。私は、建築デザインでは違う価値観があることを是非知っていただきたいです。 香山先生のデザインは、床仕上げがコテムラを消した鏡面として、大理石のように美しい仕上げまでコンクリートを昇華させたデザインです。市民感情として、『こんな立派な建物なのにロビーの床がひび割れとは』とよけいに目立ったのだと思います。
防音の2重ドアのディテールが見えます。
鉄骨丸柱はガラス面のそばにありますが、バックマリオンとして機能させているわけではなくてガラスリブで成立しているようです。外壁をテーパーで絞ってサスペンドガラススクリーンの開口部の制作限界に合わせているということでしょうか。勉強になります。
暗いラウンジから細く横長の窓のコントラストが素晴らしいです。
ロビー2階部分からもハイサイドライトの採光があります。
鋼板によるシャープな表現が大変勉強になります。
大判の鋼板が使われていて裏面の連結部と補強のリブが見えています。また、鋼板を薄く軽量化するために鋼板の4周を補強するように棒状の同鋼が平板に溶接されているようです。これだけ大きな鋼板を見せるディテールはなかなかないので、大変勉強になります。 ただ、鋭角なので裏の補強が盛大に見えてしまっていて、デザインの処理が鋭角部では躯体の面も絡んで、どう整合をとるのか難しい課題があると感じました。
株式会社片岡直樹一級建築士事務所
代表取締役 片岡直樹
設備設計一級建築士
一級建築士
管理建築士
読売理工医療福祉専門学校非常勤講師
2014グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス9の設計監理にて受賞致しました。
2008グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス8の設計監理にて受賞致しました。
建築雑誌KJ2016年12月号にデザイナーズマンション3作品が掲載されました。