ブログ
住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。 新潟県三条市弥彦線北三条駅前にあります手塚貴晴先生 手塚由比先生設計のまちなか交流広場ステージえんがわを見学してきました。通常 直線的に架構を並べると思いますが、道路の曲線の線形に木架構が沿っている事で、より架構が魅力的に見えるという事が勉強になりました。 後から知ったのですが、建物内の三条スパイス研究所というお店は、食べログ3.5以上あるおいしいカレー屋さんだったみたいです。店員さんに店内の撮影許可をいただいた際にドリンクしか頼まなかったので、カレーを食べればよかったと後悔しています。新建築2016年7月号に発表された作品です。
予約制でイベントや発表会などを行うみんなのステージというコンセプトだそうです。防犯フェンスや柵がないので、屋外軒下空間でだれでも自由に出入りができます。地価の高い都会では占有意識が強く働くので公共施設でもなかなか無い贅沢なスペースだと思います。
軒先が低く押されられ先端でGLから1.75m程度となっています。曲がった道路の線形に合わせて木架構の列柱(この表現は正しくないないかもしれません)が曲がっている効果が、普通の直線的な木架構の切妻屋根と大きな差異をもたらすことを勉強できました。
列柱の基壇が腰掛けられる軒下空間になっています。
大きな軒先空間と地面近く低くまでかけられた屋根によって木架構が守られているように見えて、正統派のプロポーションのようで私は好きです。軒先のディテールが透明波板ポリカーボネイトがただ延びただけとなっています。低い軒先なので何かぶつかってわれることがあると思います。割れてもホームセンターで建材はすぐ入手出来て葺き替え補修も簡単なのでそれで良いという選択かもしれません。軒下空間を明るくするという意味では、透明波板ポリカーボネイトの選択は正しいのだと思います。建築のディテールとしては、シャープなプロポーションにするために腐心するディテールで重要な部分だと思うのですが、この建物では、それがありません。木架構の躯体と屋根仕上げの仕様のコントラストがありすぎるのではと思いました。私は、マンションなど鉄筋コンクリート造の設計の仕事がほとんどなので、木造でも都市部では防火構造なので、こういったコストバランスにはなじみがないのでどうしても違和感を感じてしまいました。木造としてはこれでいいということなのだと思います。勉強になります。
梁せいのない細い部材を2つ抱き合わせたのぼり梁と柱脚トラス構面を作って柱脚をピン構造としているのでしょうか。経済性と合理性が感じられる構造表現で勉強になります。
外部の軒下空間では市場が開かれることがあるようです。その時には、店内と軒下がつながるようにサッシが開け放つことができるようになっているようです。 ドア上部の欄間部分の木製サッシのディーテールが勉強になります。
建物全体が縁側というコンセプトのようです。防犯柵やフェンスのない自由な軒下空間のある構成ですばらしいです。しかし、この建物は三条スパイス研究所と言うおしゃれな店舗にしか見えませんでした。私の事前の下調べが不十分だったこともあり、おしゃれな建物である事がわかってもカレー屋さんである事は梁間方向にかけられた大きなオシャレな暖簾の小さな文字でしかわからないので、食べログ3.5以上のおいしいカレー屋さんである事は伺い知ることができず、とても敷居の高い店に見えました。 私が訪問したランチタイムを過ぎてしまった平日では、お客さんが1組しかいませんでした。 商業施設と仮定しますと、駅前通りに面したファサードを桁行方向がすべて屋根で覆われていて広い道路間口に対して深い軒庇で閉じているように見えていました。木造で深い軒庇があることは正統派な切妻屋根のありかただと思います。建築のファサードとしては木造の屋根架構の桁行方向を見せるというのは商業施設の構成としては難しいジレンマが発生しているように思いました。同じ手塚先生の梁間方向をファサードとしたイコテを見た後だったので、梁間方向と桁行方向でどちらをファサードにするかで違いが大きいことを勉強させていただきました。
株式会社片岡直樹一級建築士事務所
代表取締役 片岡直樹
設備設計一級建築士
一級建築士
管理建築士
読売理工医療福祉専門学校非常勤講師
2014グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス9の設計監理にて受賞致しました。
2008グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス8の設計監理にて受賞致しました。
建築雑誌KJ2016年12月号にデザイナーズマンション3作品が掲載されました。