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住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。 ビルのリノベーション 耐震改修大規模修繕 増築で、設計は青木茂先生です。リファイニング建築と青木先生は銘打っています。2011年にこの作品は新建築に発表されていてリファイニング建築の初期の宇目町役場庁舎と似ていると思いました。現行法規に遡及適用したり、12条5項報告による既存不適格を証明して、増改築ではエキスパンジョイントを用いて分離独立基礎を設けるなど、新築の設計では想像できないたくさんの苦労や考え方が必要になり、とても難易度の高い設計であることがうかがえる力作だと思います。とても勉強になりました。新建築2011年4月号に発表された作品です。
ファサードの曲面は増築部分でエントランスホール 階段ホールが内包されています。
増築部が鉄骨で持ち出されていて外壁の一部が切り取られたような表現になっています。
増築部分が別基礎で作られています。既存建物のフロアレベルの設定のせいかレベルがGLからかなり上がっています。既存建物の設定を変えるのは困難なので、こういうところに改修設計の苦労と忸怩たる思いが感じられます。
実際の雁行した外壁ラインはルーバーのかなり奥面にあります。面を統一させるために、どうしても改修設計デザインでは『覆い隠す』表現が多くなるのだと思います。
外壁が2種類の折半貼りとなっていました。既存の鉄筋コンクリートの外壁では味気ないので金属板折半貼りとしたのでしょうか。私も折半貼りが好きなので設計に取り入れたことがあります。端部の面戸の処理が難しいと思うのですが、留め部ではプレートを45度に入れて面戸で処理しないディテールになっていました。勉強になります。 既存通路に対して改修で自動ドアがつけられています。たぶんですが、既存通路幅が狭くてプラン上通路幅までは変えることができなかったせいで、自動ドアが2枚引きになっています。苦しいプランニングの中でなんとか自動ドアをつけようと奮闘したのでしょうか。
折半外壁にとりついたインターホンが面落ち処理されています。かっこいいです。端部が面戸を用いたディテールになっています。面戸は既製品でしょうか。勉強になります。
増築部分と既存部分の間がホールとなっています。一段目が白い大理石と思われる仕上げのおおきなフロアとなっていて階段のデザインがカッコいいです。段が不規則ですが、仕上げにコントラストをつけて明確に段がわかるようにデザインされています。しかし、後から黄色の注意喚起テープラインが貼られてしまっていました。
開口部が鉄骨ブレースで補強されています。鉄骨接合部のデザインがカッコいいです。耐火被覆がないので、耐火塗料なのかもしれません。
増築部鉄骨柱が床フロアを支える部分と外壁の支持材の部分が集合して柱が密集しています。フロアに柱がたくさん落ちて新築では考えられない部分なので、本当にこれでいいのか悩むとても大変な改修設計だと思いました。勉強になります。
天井の間接照明や壁の部分では、装飾的デザインが多用されています。 建築雑誌を見て来訪するまではもっとシンプルなデザインだと思っていましたが、訪れてみるとファサード外壁だけでなく、外壁すべてとホール全体がかなり装飾的なデザインで覆われていることがわかりました。私も外装の大規模修繕デザインの実績があるのですが、既存の建物のダメなデザインの部分を美しくデザインしなおそうとすると躯体をいじるわけにはいかないのでどうしても装飾的な解決方法になるのだと思いました。とても勉強になります。
1階と2階をつなぐメインの階段です。既存建物と増築外壁部分が鉄骨梁でつながっていますが、ピン接合かローラー接合のように見えます。少なくとも剛接合ではないようです。エキスパンションジョイントで増築部と既存部では適用される法令が違うのでしょうか。 一見しただけではわかりませんでした。デザインは蹴上げがパンチング加工されたり曲面壁が木仕上げであったり外壁支持の鉄骨梁ウェブに丸穴加工がほどこされたりしています。
株式会社片岡直樹一級建築士事務所
代表取締役 片岡直樹
設備設計一級建築士
一級建築士
管理建築士
読売理工医療福祉専門学校非常勤講師
2014グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス9の設計監理にて受賞致しました。
2008グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス8の設計監理にて受賞致しました。
建築雑誌KJ2016年12月号にデザイナーズマンション3作品が掲載されました。