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住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
江戸東京たてもの園の建築家の自邸である前川國男邸を見学してきました。 前川國男先生といえば、私が一番に思い浮かぶのは、ル コルビジェの日本人の弟子である事と上野の東京文化会館です。 この作品は、太平洋戦争勃発の翌年に建てられた時代背景からは、考えられない様な素晴らしい建物です。 資材不足や当時の技術上の選択肢からでしょうか、なんでも木造作で対応した様なディテールは、逆に現在では断熱性能や気密性能 防火設備など住宅に要求される性能が高度化していることが実感できると共に、大事な変わらない事を勉強できる体験となりました。
大谷石のクランクが建物アプローチまでのクッションになり、大谷石が木造建物での全体の重厚感と水平垂直の秩序をあたえていると私は感じました。
エントランスから建物に向かって左手に低い生垣越しに北庭を眺めながらアプローチしていくこの道程が絶妙だと思います。北窓からリビング南庭まで見通せる構成がこのアプローチからも伺い知ることができます。 玄関扉が見えない構成にすることを善しとしています。 太平洋戦争の始まった物のない時代でも、建物の構成だけでこれほど素晴らしい空間をつくることができることに感動します。 勉強になります。
窓台の下に暖房器具があります。窓台が熱を横に広げて外壁窓に沿って熱気があがるように中央設置されていたのでしょうか。ペリメーターゾーン全体に暖気がまわるよう窓台が役割を果たしているように見えます。 引き違い窓から障子をすべて袖壁に引き込んで窓ガラスが全部見える仕様になっています。 窓台と引き込み障子がとても雰囲気がいいです。
洗面台も含めた収納部分がすべて、引き違いの扉で隠れる3枚引きになっています。
リビングは2層分ある高天井の天井まで届く木製サッシです。上段の欄間部分はFIXなのでしょうか。柱と鴨居 障子の格子のリズム 構成が美しいです。
1月に訪ねたのですが、はっきり言って断熱性能や気密性のないサッシや壁で容量の不足した暖房器具から察するに外と同じくらい寒いはずです。日の光が入れば大きな窓から日の光がたくさん入り温かくなりますが、天井が高いのですから暖気はすべて上に上がってしまい。大窓からのコールドドラフトが起こることが想像されます。当日もリビングの中は玄関が開けっ放しだったこともあり外と同じ気温です。ですが、なぜでしょう。雰囲気が温かく感じられるのです。日の光があるだけで、寒空の下で日の光を浴びて温かさを感じられるように温かいのです。
ものや性能がなくてもこの雰囲気を設計できることが本当にすばらしい設計なのだと思いました。感動します。
たぶん、夏になれば南庭と北庭に通じる両方の窓を開けると風が通り涼しいのかと想像されます。素晴らしいです。
前川先生の師であるコルビジェは鉄筋コンクリートが多く木造作品は少ないように思います。日本での木造建築は、コルビジェのコピーではなく、コルビジェのモダニズムを前川先生の解釈で反映させたものだと思います。だから、前川先生の木造住宅が現代に続く日本の木造建築モダニズムのひとつの原点なのではと思います。このリビングにいると私はそう感じます。
家の中心となる正面の円柱は電信柱を使用したといわれています。ペンダントライトはイサムノグチだそうです。
書斎とシンメトリーの構成です。
見込みが結構あります。窓台と木製サッシの構成が居心地の良さを演出していると思います。
上部の欄間と2段になっているのは、プライバシーで下の障子を閉めても欄間の障子を開けて光を入れるためでしょうか。
台所は現代の進化を感じました。
株式会社片岡直樹一級建築士事務所
代表取締役 片岡直樹
設備設計一級建築士
一級建築士
管理建築士
読売理工医療福祉専門学校非常勤講師
2014グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス9の設計監理にて受賞致しました。
2008グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス8の設計監理にて受賞致しました。
建築雑誌KJ2016年12月号にデザイナーズマンション3作品が掲載されました。